「オーナー経営と市場退出のメカニズム」
■本論文の目的
バブル崩壊後の失われた10年の中で、大企業は金融機関によって金利減免や追い貸しの対象とされ、非効率なままでの存続が促された。しかしながら、中小企業においては存続・退出では何が問題なのかが、必ずしも実証的に示されていない。
これを踏まえて、本論稿の目的は以下の二つを明らかにすることにある。
第一に、非上場中小企業において収益性や生産性の高い企業が存続し、パフォーマンスの低い企業が退出する仕組みが経済全体に備わっているか、
第二に、企業の効率的な存続・退出メカニズムが正常に機能していない場合には何が原因なのか、という二つのことである。
ここでは、社長に注目して議論を進めていくことにする。なぜなら、経営資源の乏しい中小企業では、社長の決定にその業績が大きく左右されるからである。
<非上場企業における所有構造と社長交代>
・所有構造
オーナー経営者が多い。
メリット:エージェンシー問題が起きにくい
デメリット:コントロールやモニタリングが困難
自己破産回避のインセンティブが働...