共同正犯、同時傷害の特例
刑法2 分冊1
2.AとBの行為があって、Cが死亡した場合、Cの死亡がAの行為によるのかBの行為によるのか不明である。AとBの間には共謀がなく、Aには殺意があり、Bには殺意はなかったとする。AとBの罪責はどうなるか。
刑法60条は、「2人以上共同して犯罪を実行」した者は正犯とされるという共同
正犯について定めている。共同正犯といえるためには、共同実行の意思と共同実行の
行為が必要であるが、AとBには共謀がないことから成立要件は満たしておらず、刑法60条の適用にはならない。また、ABがそれぞれ意思の疎通がなく、どちらの行為が原因でCが死亡したか不明な点において、2人以上が同一機会に、同一客体に同一の犯罪を行う同時犯と推測した場合、個人責任主義の原則では自分の行為から発生した結果のうち、証明された範囲で責任を負うため、ABどちらの行為によって最終的な結果が発生したかを検察官が立証することは非常に困難であり、因果関係がわからない以上はABに完全な罪責を問うことはできない。それでは不合理なので、刑法207条は、2人以上の者によって暴行が加えられ、誰の行為によって傷害の結果が発生したか特定する...