中央大学 通教の刑法総論2010年度第3課題(併発事実の錯誤)模範解答です
1.Aは、殺人の故意でBに対して実行行為を為し傷害を負わせるとともにCを
死亡させている。AはBの殺害意図はあったものの、Cについては具体的事実の
錯誤があったことから故意が阻却されるかが問題となる。
2.この点、具体的事実の錯誤による故意成立にの解釈について学説は⑴故意を
認めるためには行為者の意図するところと発生した事実との間に具体的一致がな
い限り故意責任は問えないとする説(具体的符号説)と、
⑵構成要件の範囲内で表象と結果が一致していれば故意は阻却しないとする説
(法定的符号説)で激しい争いがある。
法定的符号説においても①複数の故意を認め、それぞれの罪責の観念的競合とす
る説(数故意説)と、②一所為一故意の原則から一つの故意のみを認め(一故意
説)つつ、a)発生した事実について最も重い結果に対しての一つの故意のみを
認める説。b)a)に加えて、成立した故意以外に発生した事実に対しては過失犯
としてそれぞれの罪責の観念的競合とする説。c)発生した事実について、発生
した結果の重さに関係なく本来行為者が意図した行為に対してのみ故意を認め、
それ以外に発生した結果については過失犯...