1、 問題の所在
天皇及び皇族も日本国籍を有し、日本国の構成員という意味での国民であるが、憲法第3章の人権享有主体としての「国民」にも含まれるか。問題は、憲法及び法律によって、天皇・皇族には一般国民にはない特殊な法的地位が与えられているところにある。
(1) 公法的特例
・ 天皇の地位の世襲制(憲2条)
・ 皇位の継承権者は皇系に属する男系の男子に限られる(典1条)
・ 天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって」(憲1条)、国家機関として国事行為を行う(憲3、4、6、7条)
・ 天皇は、国庫から内廷費の支給を受け(皇経4条)、それには所得税がかからない(所税9条1項12号)
※平等原則の大きな例外をなす。
(2) 私法的特例
・ 満18歳で成年となる(典2条)
・ 婚姻(立后)には皇室会議の議を経ることを要する(典10条)
・ 天皇に財産を譲り渡し、または天皇が財産を譲り受け、あるいは賜与するには、国会の議決を要する(憲8条)
※行為能力に関しての特例。
(3)刑事法的特例
※天皇は刑事責任を負わない。
明文規定はないが、摂政が在任中刑事責任を負わない(典21条本文)こととの均衡から、当然と解されている。
学説は、このようなさまざまな特例と制限を伴った地位を、人権の享有主体であると言うことができるのかをめぐって争いがある。
2、 学説
(1) A説(肯定説、天皇・皇族包含説)
→天皇および皇族ともに「国民」に含まれるとする見解
「天皇の地位を占める人は、内閣総理大臣ないし最高裁長官の地位を占める人と同じく、日本の国籍を有する日本国民であるから、特別の反対の理由が存しない限り、(憲法)第3章に言う『国民』に含まれるものと見るのが自然である。
教科書講読 I、人権編 4、誰の人権か
「人権の保障と制限」
I、「天皇・皇族の人権」
問題の所在
天皇及び皇族も日本国籍を有し、日本国の構成員という意味での国民であるが、憲法第3章の人権享有主体としての「国民」にも含まれるか。問題は、憲法及び法律によって、天皇・皇族には一般国民にはない特殊な法的地位が与えられているところにある。
公法的特例
・ 天皇の地位の世襲制(憲2条)
・ 皇位の継承権者は皇系に属する男系の男子に限られる(典1条)
・ 天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって」(憲1条)、国家機関として国事行為を行う(憲3、4、6、7条)
天皇は、国庫から内廷費の支給を受け(皇経4条)、それには所得税がかからない(所税9条1項12号)
※平等原則の大きな例外をなす。
私法的特例
満18歳で成年となる(典2条)
婚姻(立后)には皇室会議の議を経ることを要する(典10条)
天皇に財産を譲り渡し、または天皇が財産を譲り受け、あるいは賜与するには、国会の議決を要する(憲8条)
※行...