問題
判例(東京高判H13.6.14判時1757号51頁)の判旨に従って場合、行政手続法5条1項所定の審査基準を公にしておかなかったことは、それだけで直ちに、処分取消事由を構成することになるのか、また、場合によって結論が異なると仮定した場合には、いかなる条件の下で取消事由を構成することになるのか。以上について論ぜよ。
わが国の伝統的行政法システムは、実体法中心に法治行政の原理を構成し、手続規制は実体的に正しい行為を生み出すための手段とのみ理解してきた。それ故に、伝統的見解は、当該行為の取消原因として手続固有の瑕疵というものを認めてこなかった。実体的に正しい行為を手続の瑕疵を理由に取り消すことは、行政経済に反するとさえ主張されてきた。
しかし、国民は、実体的に正しい行為を求める権利とともに、それを正しい手続によって要求する手続的権利を有する。行政主体は、手続面での人権の保障を軽視してはならない。そもそも、正しい手続によってのみ、正しい行為が生み出される。行政手続法(以下行手法とする)は、正に、国民のこのような要請に応えるために制定されたものである。
そこで、本判決は、「審査基準を公表せず、また法律上提示すべきものとされている理由を提示することなく本件却下処分を行っているところ、このような行政手続法の規定する重要な手続を履践しないで行われた処分は、当該申請が不適法なものであることが一見して明白であるなど特段の事情のある場合を除き、行政手続法に違反した違法な処分として取消を免れない」とし、「本件却下処分は、違法な処分として、取消しを免れない」と述べた。高等裁判所レベルで行手法違反を理由に処分を取り消した最初の事例である。
行政法総合演習Ⅰ(行政活動法)
問題
判例(東京高判H13.6.14判時1757号51頁)の判旨に従って場合、行政手続法5条1項所定の審査基準を公にしておかなかったことは、それだけで直ちに、処分取消事由を構成することになるのか、また、場合によって結論が異なると仮定した場合には、いかなる条件の下で取消事由を構成することになるのか。以上について論ぜよ。
1 判例(東京高判H13.6.14判時1757号51頁)について
わが国の伝統的行政法システムは、実体法中心に法治行政の原理を構成し、手続規制は実体的に正しい行為を生み出すための手段とのみ理解してきた。それ故に、伝統的見解は、当該行為の取消原因として手続固有の瑕疵というものを認めてこなかった。実体的に正しい行為を手続の瑕疵を理由に取り消すことは、行政経済に反するとさえ主張されてきた。
しかし、国民は、実体的に正しい行為を求める権利とともに、それを正しい手続によって要求する手続的権利を有する。行政主体は、手続面での人権の保障を軽視してはならない。そもそも、正しい手続によってのみ、正しい行為が生み出される。行政手続法(以下行手法とする)は...