W・Shakespeare(以下、シェイクスピア)の作品が優れたものである理由を、物語・性格描写・筋または構成・雰囲気の観点、そして、小説と劇との相違にも注目しながら、L・D・Lerner(以下、ラーナー)の見解に基づいて詳述する。
物語は小説同様に劇でもその元になる。しかし、劇でもまた、これは一番興味のあるものとは言えない。その価値は、これを土台として築き上げていくことができる筋と状況とのなかにある。物語を語るとなると、劇作家の方が小説家より幾分やりにくいところがある。劇には上演するということがあることを考えてみれば、それはすぐにわかることなのだ。劇の始まる前に起こっていたことをどうして観客に告げたらよいのだろうか?小説家にはこれは何でもないことだ。小説家が過去の出来事を述べるのは、開巻第1章ですることもあり、その他どこでも好きなところでやるわけだ。ところが劇作家となると、まさか舞台の正面まで歩いて出て、それまでに起こったことを説明するというわけにはいかないのだ。我々に知らせておかなければならないことは、劇そのもののなかで言わなければならない。つまり、登場人物のあるものが他の登場人...