既遂犯の成立には実行行為・結果の発生・実行行為と結果との因果関係が必要である。よって、実行の着手がまったく存在しない場合、すなわち実行の着手すら認められない場合には既遂犯の成立が問題とならず、予備・過失罪が認められる余地があるに過ぎない。過失犯が成立するというのは実行の着手に至らない予備行為から結果発生してしまった場合である。例えばAがBに飲ませようとして戸棚に入れておいた毒入りウイスキーを、Bが勝手に見つけて飲んでしまった場合などでAには過失致死が成立する。
1、実行の着手が認められるか否かは未遂犯の成立について問題となる。実行の着手が認められると、未遂犯として原則的に処罰されるのに対して、実行の着手に至らなければ予備・陰謀として例外的に処罰されるので、実行の着手は未遂犯と予備・陰謀罪を区別する基準として重要である。そこで実行の着手の意義が問題となる。
2、⑴ 主観説は、範囲の成立がその行為により、確定的に認められる時とする。しかし、この説によると行為者の主観を重視しすぎることによって、処罰の時期が早くなりすぎるので妥当ではない
⑵ 形式的客観説は、罪刑法定主義の見地から形式性を重視し、犯罪構成要件に属する行為に着手した時に実行行為を認める。この説によると、実行の着手の時期が遅くなり処罰時期が遅くなりすぎるため、妥当ではない。この立場には構成要件の一部又はこれに近接密接する行為を開始した時に実行の着手が認められるとする説もある。しかしこの説は既に形式的客観説の放棄であり、拡張の根拠・基準が必要である。
実行の着手
一. 既遂犯の成立には実行行為・結果の発生・実行行為と結果との因果関係が必要である。よって、実行の着手がまったく存在しない場合、すなわち実行の着手すら認められない場合には既遂犯の成立が問題とならず、予備・過失罪が認められる余地があるに過ぎない。過失犯が成立するというのは実行の着手に至らない予備行為から結果発生してしまった場合である。例えばAがBに飲ませようとして戸棚に入れておいた毒入りウイスキーを、Bが勝手に見つけて飲んでしまった場合などでAには過失致死が成立する。 二. 1、実行の着手が認められるか否かは未遂犯の成立について問題となる。実行の着手が認められると、未遂犯として原則的に処罰されるのに対して、実行の着手に至らなければ予備・陰謀として例外的に処罰されるので、実行の着手は未遂犯と予備・陰謀罪を区別する基準として重要である。そこで実行の着手の意義が問題となる。 2、⑴ 主観説は、範囲の成立がその行為により、確定的に認められる時とする。しかし、この説によると行為者の主観を重視しすぎることによって、処罰の時期が早くなりすぎるので妥当ではない ⑵ 形式的客観説は、罪刑法定主...