非正規従業員についての小論

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    資料紹介

    格差社会の定義としては、富裕層と貧困層とが二極化するという点が挙げられる。ここでは貧困層の中でも、非正規労働者(パートタイム労働者や、フリーター、派遣社員)に焦点を当て、貧困層の是正案を推察したいと思う。

    資料の原本内容

     格差社会の定義としては、富裕層と貧困層とが二極化するという点が挙げられる。ここでは貧困層の中でも、非正規労働者(パートタイム労働者や、フリーター、派遣社員)に焦点を当て、貧困層の是正案を推察したいと思う。
     
    まず、グラフは総務省の労働力調査「雇用形態別雇用者数」から、正規社員と非正規社員の推移を示したものだ。
     このグラフからわかる通り、今日では非正規労働者が非常に増えていると言わざるを得ない。平成元年度、非正規労働者数は817万人だった。しかし平成20年度になり、その数は倍以上の1737万人に増えている。率に直すと、平成元年度では非正規労働者の割合は19.1%だが、今年は34.0%となっている。橘木氏は、これを格差拡大の大きな要因と言っている。「正規労働者と非正規労働者の間には、一時間あたりの賃金の格差が存在します。(中略)このように、もともと賃金が低い上に、不安定な立場に置かれている非正規労働者が増えれば、それは格差の拡大につながるわけです」(橘木 2006:40-42)
    つまり、賃金が低く、また雇用形態により不安定な立場である非正規労働者の増加が、格差社会の拡大を担っていると言っても過言ではないのである。
    では、非正規労働者はどの程度の賃金を得ているのだろうか。次の図は、総務省の「仕事からの収入(年間),雇用形態別雇用者数」から平成19年度の非正規労働者の年収をグラフ化したものだ。
     この図を見てわかる通り、非正規労働者の実に77.0%は年収200万円未満の賃金しか得ていないことがわかる。更に年収が100万円未満の割合は42.3%であり、月額は8万3333円以下となる。これは生活保護の(年齢や世帯数、地域によって違うが)生活扶助金8万円と住居扶助上限1万円から考えるに、国民が最低限生活するに必要な額を下回っている。問題なのはこれが非正規労働者の約半数が生活に窮する現状であるという点だ。実に労働者のおよそ15%以上が、生活すら出来ない額しか賃金を得ていないのである。
    ここで橘木氏は、フリーターや非正規労働者は正社員になりたがっているのが現状だ、という。(橘木 2006:167-169)リクルート ワークス研究所の「アルバイターの勤労等に関する調査」では、正社員化への希望という点で男女計75.5%の人が、フリーターを辞めて定職につきたいと語っている。
    しかしながら、三浦氏は「非正社員は必ずしも正社員になりたいわけではない」(三浦 2007:69)と語っている。何故か。
    朝日新聞が2006年に行った調査では、「「あなたは今後正社員として働きたいと思いますか。非正規雇用の社員のまま給与や福利厚生面の待遇を上げてほしいですか」という質問に対して、「正社員として働きたい」と回答したのは男性派遣社員の53%、男性パート・アルバイト・フリーターの42%にすぎなかった。「非正規雇用の社員のまま給与や福利厚生面の待遇を上げてほしい」と回答したのは、派遣社員の40%、パート・アルバイト・フリーターの36%だった。」(三浦 2007:70)
    女性に関してはもっと低く、正社員になりたいと答えたのは派遣社員で38%、パートなどの非正規労働者では20%という結果だった。逆に待遇を上げてほしいと答えたのは、どちらも50%以上であった。
    この差は、リクルート ワークス研究所の調査では、正社員になりたいか、という項目だけであったが、朝日新聞社の調査には待遇を上げてほしい、という項目があったためである。
    これらを受けて三浦氏は、「もし非正社員のまま待遇が改善されるなら、非正社員のままでもいいと思っている」(三浦2007:75)と類推している。リクルート ワークス研究所の「非典型雇用労働者調査 2001【全体 就業形態別編】」の現在の就業形態に対する満足度では、非正規労働者の約7割が現在の就業形態に満足していると答えている。
    つまり、非正規労働者にとって雇用形態は必ずしも重要な問題であると考えられていないのである。むしろ、給与や待遇に不満を抱いている人のほうが多い。
    前述した通り、非雇用労働者の給与は非常に少ない。このことが、貧困層を招く要因であり、また格差を広げていると考える。したがって、格差社会を是正するために、非正規労働者の給与および待遇改善を推奨したい。
    第一に、純粋成果主義もしくは職務給制度の導入が上げられる。つまり、「各人がどういう仕事についているか、どのような職務を行っているかということを明確に確認した上で、同じような仕事をしている人に対しては、一時間あたりの賃金を同一にする」(橘木 2006:162)というものだ。賃金の公平性も守れるし、また非正規労働者の所得を増やす効果も期待できる。
    またオランダでは、失業率が高まった折にワークシェアリングという制度を導入し、同一労働・同一賃金という政策で失業率を低くすることに成功した。つまり正社員が失業者に自分の仕事を譲ったのだ。格差が広がっている日本も、こういった政策を考えてみる必要があると考える。
    しかしながら、この制度には問題が多くある。まずは正社員・非正社員の区別が根付いていること。安い賃金で働いていた非正規労働者が、正規労働者と同じ給料になったとき、果たして企業は非正規労働者を雇用するだろうか。また、比較的賃金が安く済む外国人労働者へ移行する可能性があるという点も見逃せない。
    もう一つはアメリカの行っている非正規労働者の保護と権利を法律化する動きだ。アメリカでは派遣労働者も派遣先の会社の労働組合に、会社の合意なしに加入することが出来る。派遣労働者の団体交渉を広く認めているという点で、日本とは大きく異なっている。残念ながら日本の派遣労働及び非正規の労働者に組合は認知が広まっておらず、また交渉権もないに等しい。非正規労働者の団体交渉権を認めることで、給与や待遇改善に対し、労働者の自発的な行動が可能になる。
    そして最後に、セーフティネットの充実化という点が挙げられる。現在、社会保障制度を初め様々なセーフティネットが縮小している。その中でも非正規労働者が受ける被害は多く、非正規労働者には失業保険にも加入できないのが現状だ。しかし日本は現在、そういったセーフティネットの縮小する方向へ歩いている。これでは非正規労働者はますます困窮するだけである。まずは医療保険や福利厚生面などで、非正規労働者の待遇を改善すべきである。
     貧困層にいる非正規労働者において、最も問題なのは給与や待遇である。残念ながら日本ではそういった非正規労働者に対する保護や権利が法令化されていない面が多くある。彼らの権利や待遇改善を考えることで、非正規労働者の問題は飛躍的に改善されると考える。
    本字:2668
    参考:
     橘木俊詔,2006,『格差社会 何が問題なのか』岩波新書
     三浦展,2007『下流社会 第2章』光文社新書
     リクルート ワークス研究所 http://www.works-i.com/
     総務省 http://www.soumu.go.jp/
    非正規労働者について

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