P6305 米文学研究
<テネシー・ウィリアムズ作『ガラスの動物園』の主題について述べよ>
この劇は、息子トムの鬱積した不満と、姉ローラと母アマンダの未来に対するかすかな希望が、時間を経るごとにそれぞれ大きくなり、あるきっかけをもって最後にはガラスが割れるがごとく砕け散った過去の出来事についての追憶劇である。追憶劇は意識内部として展開してゆくと自ずと主観的な内容になってしまうため、時間軸を現在に置き、語り手トムによる追憶形式にし、時間的距離を置くことで、ある程度客観的な視点をもって語っていると思わせる狙いがある。観客は「現在」という流れる時間のなかでは自ら気づくことのできない問題を、トムの追憶を通して過去を観るという体験をすることで、第三者的な視点で「現在」を認識することを要求され、問題の発見へと促される。
Ⅰ.第一部(1場~5場)-来訪の準備-
第1場はトムの語りから始まり、1930年代の社会的背景、盲目な中産階級、追憶劇であること、青年紳士について、劇中シンボルが用いられていること、父親に関することが語られたあと追憶の世界に入ってゆく。語り手と追憶を結ぶ陰鬱な音楽、やわらかい光...