ことばの機能は、思考と伝達である。そして、実体そのものではなく、概念である。例えば、「花」ということばからは、ひとりひとりが異なった情景を思い浮かべ、固有の花を連想するであろう。しかし、実物の花を見たり触ったりしたら、目の前にある具体的な花以外の花を連想することは少ないであろう。
このこと基に、ことばを用いた芸術と、ことばを用いない芸術とを比較し、特徴や共通性について考察していく。
例えば、ことばを用いた小説では、そこに書かれていることばという概念を通した読者は、それぞれが異なった情景をそのことばから思考し、そこから得る感情も異なる。
一方、絵のようなことばを用いない芸術では、最終的に得られる感情はことばを用いない芸術と同様に多種多様であるが、それを呼び起こすものは絵そのものに共通してくる。
つまり、鑑賞者の感情を呼び起こすものが、ことばを用いた芸術では、ことばを通して思考されたものであり人により微妙に異なるのに対し、ことばを用いない芸術では、実際に見た絵のように誰しもにとって共通してくるである。
そして、ことばの伝達機能についても、両者に異なる特徴をもたらす。人は抽象的な概念であるこ...