小説ノート11

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    死神の精度 2009年02月23日 伊坂 幸太郎 でも、たとえば、自分と相手が同じことを考えたり、同じことを口走ったりするのって、幸せじゃないですか」 「同じことを?」何だそれは。 「たとえば、同じものを食べた後で同じ感想を持ったり、好きな映画が一緒であったり、同じことで不愉快さを感じたり、そういうのって単純に、幸せですよね」 「幸せか?」 「大きく言ってしまえば、そういうのは全部、恋愛の範疇じゃないかって、僕は思うんですよ」 「人が生きているうちの大半は、人生じゃなくて、ただの時間、だ」 人間は、何を見ても人生と結びつけるのだ。 「ここはよ、川の上流、スタート地点だろ。それがこの滝だ。ここは派手だし、人も多いじゃねえか。それってよ、俺たちが生まれた時と似てねえか?俺たちも生まれた時はよ、こんなんだったんだろ?お祭り騒ぎでさ、人にも注目されてよ。みんなに喜ばれて。でも、それがどんどん流れていくうちに、今見てきたみてえな、地味で、ゆらゆら流れているだけになっちまう。何か、似てねえか?」 「たとえばさ、太陽が空にあるのは当たり前のことで、特別なものではないよね。でも、太陽は大事でしょ。死ぬ...

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