小説ノート4

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    ★きいろいゾウ 2009年09月09日 西 加奈子 月が欠けていってるときは、言葉とか、気持ちとか、考えてることが、いつもよりするすると出る。好きな人に好きっていうときも、お母さんにごめんなさいの手紙を書くときも、いつだって、月が欠けてるときだ。満ちてるときは、言いたいことがたくさん溜まって、どんどんどんどん溜まって、私の心が風船みたいになっているんだけど、それを吐き出す術が分からない。でもそんなどきどきを、ムコさんはさらりとした言葉で片付けてしまった。「大丈夫ですよ。」初めて会ったあの夜に。 小説なんて書かなくても生きていけるような気がするし、なのに書かずにおれないことに安心もしている。東京から逃げてきたようにも思うし、東京を捨ててきたようにも思う。何せ心が平らになっている。雨が降ることやトマトがなることにとてつもなく大きな意味があって、だから僕が東京に対して思っているセンチメンタルな気持ちや、残してきた思い出がとても瑣末なことに思える。だれか全く違うほかの人の出来事のようだ。 小学校三年生の頃から、ううん、そのずっと前から、私は感情の作り方を人に頼ってきた気がする。誰かがいるから笑...

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