源氏物語 後宮
『源氏物語』の舞台は平安京であり、内裏、大内裏、後宮や登場人物の私邸が細かく描写されている。その中の一つ後宮を取り上げ、後宮の意義や社会的影響、『源氏物語』の中でどのように描かれているかを考察したい。後宮で暮らす天皇の妻や女官等の人々や後宮殿舎のことは『源氏物語』に多数登場するが、この論文では後宮の女性たちの呼称を簡潔に説明し、入内した姫君の例として、六条御息所の娘で光源氏の養女として冷泉帝に入内した斎宮女御をとりあげ、彼女の入内までの経緯と絵合による後宮の優劣争いを述べていきたいと思う。
一、後宮とは
内裏のうち、皇后・中宮・女御等の天皇妻が住み、更衣をはじめ、内侍司以下の女官が奉仕した奥御殿、またはそこに住む人々の総称である。帝が日常生活を営む清涼殿の後方(南)に位置する平安京内裏の七殿五舎が該当する。天皇の居所清涼殿の近くには弘徽殿や飛香舎(藤壺)等高位の妻の殿舎があった。摂関時代には中宮(皇后)・女御・更衣・御息所らが皇族や貴族の娘から上がり、その教育係の女房たちもあまた侍った。このことからわかるように、平安時代の摂関体制下の後宮は、外戚関係を維持する根本として機能しており、后...