近代哲学の特質を説明する上で、近代哲学自体を考察したところで、その内容を説明できない。なぜなら、中世人の世界観、哲学がどのようなものであったかを理解しなければ、その革新性を説明できないからである。以下では、中世人の世界観とその哲学を取り上げ、近代にルネサンス運動を通じ思想はどのように変化していったかを概観し、その思想の中心にある近代哲学の特質を説明していきたい。
中世人の世界観は神と共にあった。中世スコラ哲学においては以下の二点に特徴があった。一つは、万物には魂が内在し、それが物質を動かす原動力となっており、それは段階を追って精神から天使を経て最終的には神に到るという考え方である。もう一つは、神によって与えられた位序(オルド)だ。この神によって与えられた位序により、人の生活は決まるという考え方である。このような階層的な考え方は、身分制度と相なし、中世人の世界観となっていた。
この状況に大きな変化をもたらしたものはルネサンス運動である。それは人文主義、文芸復興、宗教改革運動など様々な面を持つのだが、それらはすべて人間中心主義という考え方を持っていた。それまでの神中心の考え方から人間中...