「在宅福祉サービスの体系と介護保険制度について」
日本は伝統的に、地縁、血縁関係の相互扶助により地域生活を営んできた。戦後60年以上がたち、核家族化が進み高齢者のみの世帯が増加し、家族扶養の意識が変化してきた現代、家族による私的扶助には限界があるが、高齢者は身体機能が低下しても、可能な限り住み慣れた地域社会で、家族や隣人たちと生活したい、と願っている。在宅福祉サービスは、このように地域社会の中で生活する高齢者に対して、可能な限り長く在宅生活を継続できるよう支援するものである。
在宅福祉サービスは、1956年ごろから一部地方で訪問介護事業の前身にあたる家庭養護婦派遣制度が先駆的に実施され、1960年代にかけて大都市部へ広がりを見せるようになった。1963年、老人福祉法が制定され、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム等への入所措置等の施設福祉施策が制度化される一方、家庭奉仕員派遣事業等の在宅福祉施策も実施されていった。施設中心の政策では、入所待ち高齢者や、在宅で寝たきりの高齢者が問題になるなど、限界があったため、在宅福祉対策として1978年にショートステイサービスが、1979年にはデイサー...