法が実現すべき「正しさ」について、現在どのような議論が行われているか論じなさい。
現代の法観念では、法内容の正当性いかんが問題にされることが多い。法は何らかの正しさを示しており、その時々の時代、地域、社会背景に応じて、その漠然とした何らかの正しさから、具体的な社会主義の形式となる法律を引き出してくる、という考え方である。
しかし、実際には、その時々の時代や地域、社会背景に応じて、正しさを具体的な正義として実現することこそが、最も困難になる。誰が、どうやって具体的正義を決め、どのように国民がそれを受け容れるのか。お互いに異なる主張を行う者たちの間で、どちらか一方が正しく、他方が不正であると言えるのであろうか。もしそうであったとしても、それを裁定する「神の目」を誰が持っているのであろうか。
何を実質的な正義とするかについては、とりわけ19世紀以降、語られることが少なくなった。それには価値相対主義の考え方が影響している。価値相対主義とは、カントの方法二元論に基づき、在るものSeinと在るべきものSollenとを区別する論理をいう。在るものとは存在や事実であり、在るべきものとは当為や価値を示している。方法二元論では、この存在と当為とを峻別し、何かが在るということからど...