イエスは、三十歳の頃、洗礼者ヨハネの教えに耳を傾け洗礼を受けた。イエスの伝道の第一声は「悔い改めよ、天国は近づいた」(マタイ四・一七)であった。これは洗礼者ヨハネの呼びかけと同じである。
イエスが伝道を開始して間もなく、ペテロとアンデレ兄弟が弟子になり、ヤコブ、ヨハネの兄弟も間もなくイエスに従った。また、厳しく税金を取り立て、ユダヤの人々から嫌悪の目で見られ、彼らと同席することすら拒まれていた「取税人」レビも弟子となった。
イエスは、病人や遊女など、当時の社会から「罪人」として除外されていた、経済的にも社会的にも社会の最下層に属する人々へも積極的に近づき交わりを結んでいった。また、身体の不自由な人の治癒にも当たった。当時のユダヤ社会においては、身体の不自由な人や病人、とりわけ癩病人は、みずからの(あるいは先祖の)犯した罪に対する神罰を受けたもの、と考えられ、家族や社会から遮断され、健康な者は、彼等と接触することが禁じられていた。イエスが救済の対象として重視したのは、罪人として一括される病人や身体の不自由な人ばかりではない。パリサイ派や熱心党のグループから蛇蠍のごとく忌み嫌われていた...