まず、「物語」の発生と展開についてであるが、そもそも「ものがたり」というものは、成文化されたものを指すだけではなく、おしゃべりという意味も含んでいる。文学史として考えるならば、成文化した「物語」に焦点を当てるべきであるが、そもそもの「ものがたり」という言葉の意味を考えたときに、お喋りという要素を抜きに「物語」の発生を考えることが出来ない。お喋りといっても世話話というようなものではなく、口承という意味である。日本最初の「物語」といわれている『竹取物語』は十世紀半ば頃の成立といわれているが、成文化される以前に『万葉集』に竹取の翁についての歌が残されているように、成文化される以前から何らかの形で継承されていたのである。しかし、それらの口承されるものは、日本語であるため、漢文で表記しにくい。しかし、仮名が発明され、話し言葉の表記が容易になることで、口承という形で伝わっていた「物語」が成文化されていくのである。このように仮名の発明により「物語」は飛躍的な展開をみせるのだが、当時の正式な書体はあくまでも漢文であり、仮名は女性の中へと広がっていく。そして、その女性たちが「物語」の更なる発展に寄与する...