仕事と幸福について
古代から多くの哲学者が「仕事」について論じてきた。
勿論、日々の仕事の厳しい現実に関心があったからではない。
彼らが関心を寄せたのは、抽象的な概念としての「仕事」だ。
一方現代になって、経営コンサルタントなどと呼ばれる人たちも「仕事」について盛んに論じている。
いうまでもなく、こちらは、極めて「現実的な」仕事論だ。
扱うテーマは経営者や企業家へのアドバイスから、個々人の細かなキャリア・プランニングまで多岐にわたる。
あえて「仕事の意義」といった抽象的な概念を避けているようにさえみえる。
哲学は、人々の価値観についても語る学問だと言えるが、この価値観と言うのは、「仕事」にとって、非常に大切なものだ。
たとえばビジネスの世界では、事業の収支決算はお金という観点からのみ語られるが、個人の損得はお金だけで計れるものではない。
私たちが仕事の事を考える場合、それによって得られるお金以外にも、地位、権力、そして仕事の中身そのものの重要性など、色々な面から検討するはずだ。
そして、それらの利益を手にするために支払わなければならない代償についても、道徳観や...