1.はじめに
地方分権、民営化、マスコミ報道問題、政治献金、米軍基地、ダム問題など、近年様々な形で公共性を問う問題が発生している。それぞれの問題における「公共性」の意味内容は異なっているが、「公共性」とは何かが改めて問い直されるべきである。
日本において「公共性」という概念は、国家・政府が行う行為、あるいはそれらが関わる行為に特化して用いられてきた。それゆえ、国家を構成している一般市民・住民が公共性を形成すべきだという意識が成立しにくく、市民・住民が担う市民的公共性が、絶えず国家・政府に規制された国家的公共性にすり替えられてきた。これには、日本で歴史的に形成されてきた官僚主導の社会システムと関わっているだろう。
ここでは日本における「公共性」のあり方に触れるとともに、市民・住民が担う市民的公共性について考察していく。
2.「公/私」の区分
公共性の問題を考える際、「おおやけ/わたくし」、「公/私」、「public/private」といった対概念が用いられることがある。これらは一見同じ概念に見えるが、その意味内容はそれぞれ大きく異なっており、相反する意味を持つものもある。しかし現代日...