韓国人の儒教式祖先祭祀の社会性と宗教性について論じている。
三国時代と高麗時代には国教である仏教がすべての領域において大きな影響を及ぼしていた。したがって、当時の祖先祭祀は家系継承とは関係なく、祖先崇拝の一環として行われたし、先祖の位牌も寺院に安置し僧侶の手を借りて供養を行っていた。このようにすべてを寺院が担当していたので、祭祀を行う方式も仏教式祖先供養の形態を取っていた。当時は儒教の家族理念がまだ導入されていなかったことから、家系継承のために祖先祭祀を受け継ぐという認識も極めて稀薄であった。したがって、すべての子女が、寺院に祀られている先祖のために供養物を準備するなど、平等な権利と義務を果たしていた。つまり、特定の個人が祖先祭祀を独占することなく、交替で祖先祭祀を担当していた。
ところが、高麗末期・朝鮮初期に儒教が導入されると、仏教にかわって儒教式祖先祭祀が定着するようになる。以後18世紀を基点に確固たる定着を図った儒教理念は、祖先祭祀をはじめすべての領域において儒教化を行っていく。これによって、祭祀の形式のみならず継承方式もそれ以前の時代と明確に区分されるようになる。すなわち、仏教の影響の下ではすべての子女に均等な機会が与えられていた祖...