1 賃借権の移転と譲渡担保
問題
Yは、Aの所有する甲地を、建物所有目的でAから賃借し、その上に乙建物を建て、自己名義で保存した。YはBから融資を受けるにあたり、担保のために乙建物の所有権をBに移し、売買を原因とするBへの所有権移転登記をおこなった。しかし、乙建物は依然としてYが使用を続けている。
その後、Aは、甲地をXに売却し、売買を原因とするXへの所有権移転登記をおこなった。この場合、Xは、Yに対して、甲地からの退去を求めることができるか。
解答
1 XはYに対して所有権に基づく建物および土地明渡の請求ができるか。
(1)Xについて
Xは、Aから土地甲を買い受けて(民555条)、所有権を取得しており(民176条)、所有権移転登記を済ませている。
よって、Yに所有権の移転を対抗できる(民177条)。
(2)Yについて
YはAから甲地を借りている(民601条)が、対抗要件である乙建物の登記名義が譲渡担保設定のためにBとなっている。
そこで、YはXに対して借地借家法10条1項の「登記」があるとして対抗できるか。
思うに、譲渡担保権者の建物登記も「登記」と認めないと、...