筋委縮性側索硬化症の病態生理・治療・予後・看護
<病態生理>
上位運動ニューロンと脊髄前角細胞の双方、すなわち大脳から筋に至るまでの末梢神経(全運動神経系)に退行変
性をきたす疾患である、人口10万人に2~6人の頻度で見られ、全国で5000~7000人の患者がいる。骨格筋を
支配している脊髄前角細胞からは、筋肉を栄養する栄養因子が出ており、前角細胞がなくなるに伴って、それに支
配されている筋肉が委縮すると考えられている。多くは40~60歳で発病し、男性にやや多い。90%以上は散発性
に発症するが、遺伝性の症例も数%程度存在する。
■症状・予後
筋力低下は上肢の末梢、特に手指筋から始まり、進行とともに下肢、および全身に及ぶ。手では骨間筋・母指球
筋・小指球筋などが委縮し、鷲手や猿手に似た特徴的な手の変形を呈する。
四肢の筋力低下のほか、顔面・舌の筋肉や構音・嚥下にかかわる筋肉がおかされ、構音・嚥下障害をきたす。構音
障害によって、初期からコミュニケーション障害が顕著となる。嚥下障害が進むと、誤嚥性肺炎を繰り返し起こすよう
になる。最終的には呼吸筋の筋力低下がみられるようになり、呼吸不全を...