(3)
(2)で示したように、不況時には財政政策は有効であるが、金融政策は有効ではない。にもかかわらず、日本政府が財政支出の削減や量的緩和による通貨供給の増大政策を採っているのにはいくつか理由がある。
まず財政支出について述べる。財政支出を削減し続けている理由の1つに、国債発行残高の累計的増加がある。国債発行残高が増加して起こりうる事態は、金利の上昇であり、それにより民間投資が抑制されてしまう。現在公債の発行残高は700兆円を越しており、これ以上の累積残高は経済に悪影響を及ぼす恐れが強い。そのため、財政支出を削減せざるを得なかったという側面がある。
他には、先の記述に関連して、リストラ・事業撤退・工場閉鎖・倒産などの先行き不透明な景気情勢が将来に対する不安を生み出し、財政支出を増やしても思うような効果をあげられなかったことが理由として挙げられる。本来なら、財政支出の拡大が、資金流通を促し、何倍も大きな支出につながり、それが景気を刺激する。しかし、企業などが先行きに対して消極的な見方をした場合、設備投資などの支出が抑えられるため、思うような効果が期待できない。以上のような理由のために、財政支出を増やす意味がなく、財政支出の削減を続けていると考えられる。
次に量的緩和について述べる。まず、金利はゼロ以下には出来ないことから流動性の罠の状況下では金融政策は無効とされる。しかしそれは、金融政策の中間目標を金利ターゲットとした場合の議論であり、これを通貨供給による「量」に発展させようというのが金融の「量的緩和論」の基本的な考え方である。90年代半ば、金融当局は、巨額の不良債権を抱えていた。不良債権を抱えた銀行とその借り手企業は、負債が資産より大きいという債務超過に陥っていた。
経済学A 課題レポート
IS―LM分析
(1)
不況時には金利が低く国民所得の値も小さい。この状態をIS-LM曲線で表したのが図1である。このとき均衡点EはLM曲線の水平部分上にあり、流動性の罠にはまっていると考えられる。
(2)
まず、不況時に財政政策が有効である理由を示す。初めのIS-LM曲線が図2のISとLMであるとする。ここで政府が公共事業や減税などの財政政策をとったとすると、政府支出が増え、有効需要が創出されることによって国民所得が増加する。その結果、ISが右方向にシフトしてI’S’となる。このとき所得はY1からY2へと増加する。以上のことから、財政政策が有効であることが分かる。
次に、金融政策が有効でないことを示す。例えば、公開市場操作などの金融政策を行ってマネーサプライを増やしたとする。このときLM曲線は図3のLMからL’M’となるが、通常であれば金利が下がることによって所得が増え、一定の効果がある。しかし不況時の場合、図のように金利は変化せず、所得もY1から変化しないことが分かる。このとき、この市場は流動性の罠に陥っていると考えられる。以上より、不況時には金融政策が...