国際私法
国際私法上、弱者保護という要請は、どのように考慮されているか。
----------------1.はじめに
わが国では、法例7条1項において当事者自治の原則が採用されている。この当事者自治の原
則の下では、当事者による準拠法の指定は一般的に許容されている。しかし、保険契約や銀行
取引にみられるような附合契約など、当事者の一方が実質的にその契約内容を決定する契約に
ついては、特に、弱者保護的観点から約款による準拠法指定を許さないとする見解、あるいはそ
の効力を制限的に解すべしとする見解等があり、そのような立場にたてば当事者自治の原則は
あらゆる種類の契約に一律に妥当するものではなく、当事者による準拠法指定それ自体が抵触
法上許されない場合を生ずることがある。このように、国際私法上、弱者保護という配慮は、国家
の介入による強行法規によってなされている。
2.労働契約の特則
国際私法上の当事者自治の原則は、実質法上、契約自由の原則が依然として支配的な分野、
たとえば対等の商人間の、国家の強行法規による規制のない売買契約などには最もよく妥当す
る。
ところが労働契約、消費者契約...