「商法における運送人の損害賠償の考察」
はじめに
法体系における商法と民法との関係を明らかにしてみると、民法とは独立した法システムとしての商法を認める考え(実質的意義の商法)と、それを否定する考えがある。商法の自主性を肯定する場合は、商法と民法とを区別する基準を明確にした上で両者の関係を論ずる必要があり、企業法説によれば、経済主体間の利益調整において民法も商法も同質であるが、企業を対象にする商法は、企業をめぐる経済主体間の利益調整をはかることに限るのに対して、民法は、企業に限られない広く一般の経済生活をめぐる経済主体間の利益調整を行うことで両者は異なるとしている。また、抽象的だが、民法は静的安全が原則であるのに対して、商法は不特定多数人間の反復継続する取引を念頭に置いているため、動的安全に重点が置かれている。
このような意味で民法は最も基本的な「一般私法(一般法)」であり、商法はその特別法であるとしている。特別法は元来、一般法の中から特殊の事項を抽出し、それを特別に扱おうという趣旨で作られたものなので、特別法は一般法に優先するのが原則である。そして一般法は、特別法に無いものについ...