『「灰の水曜日」について、あるテーマを選んで論述せよ。
内容にふさわしいタイトルを付すこと。』
「求めよ。さらば与えられん。」
T.S.エリオット(Thomas Stearns Eliot, 1888-1995)は、独創性の強い詩人であり、劇作家・文芸批評家など様々な顔を持っていた。エリオットの作品は、彼の人生における世界観とともに大きく変化していく。初期の作品を取り上げると、処女詩集『プルーフロックとその観察』(1917)では、決められた詩形などはなく、都市生活を対照的かつ比喩的な文脈を用いて描いている。それが次第に社会的なテーマ、さらには宗教的なテーマをモチーフにしていくこととなる。また、『荒地』(1922)は、エリオットの代表作として有名であり、近代文明の破壊とその前後の繁栄の中に潜む堕落と衰亡の姿を、神話や民俗学などを駆使して描かれている。中期の詩として代表的なものが、『うつろなる人々』(The Hollow Men, 1925)、『妖精詩集』(Ariel Poems, 1927-30)、『灰の水曜日』(Ash Wednesday, 1930)の3篇である。前述したように、エ...