責任能力が欠如するときは、違法行為に出たことについての法的非難が不可能であるから、犯罪は成立しない。責任能力が著しく低減するとき、犯罪は成立するが、刑は必ず減刑される(39条参照)。しかし、構成要件に直接的に該当する行為(結果犯の場合であれば、最終的な結果惹起行為)の時点(これを「結果行為」の時点という)において行為者が飲酒等による一時的な責任無能力ないし限定責任能力の状態にあっても、それに先行する時点(すなわち、「原因行為」の時点)において責任能力が認められるとき、39条の適用を否定して、完全な責任を肯定しえる場合があるのではないか。これが、「原因において自由な行為」の問題である。
原因において自由な行為
はじめに
責任能力が欠如するときは、違法行為に出たことについての法的非難が不可能であるから、犯罪は成立しない。責任能力が著しく低減するとき、犯罪は成立するが、刑は必ず減刑される(39条参照)。しかし、構成要件に直接的に該当する行為(結果犯の場合であれば、最終的な結果惹起行為)の時点(これを「結果行為」の時点という)において行為者が飲酒等による一時的な責任無能力ないし限定責任能力の状態にあっても、それに先行する時点(すなわち、「原因行為」の時点)において責任能力が認められるとき、39条の適用を否定して、完全な責任を肯定しえる場合があるのではないか。これが、「原因において自由な行為」の問題である。
これにつき、肯定説と否定説が対立している。
肯定説では、原因行為を構成要件該当行為とし、これを帰責の対象とする「原因行為説」ないし「構成要件モデル」と、結果行為を構成要件該当行為であるとしつつ、原因行為の時点における行為者の意思決定への非難可能性に注目して、後に行われる構成要件該当行為についての有責性を肯定する「結果行為説」ないし「例外モデル」に分かれている。
否定説では...