(1)目的
電子は、素粒子のなかで最も古く発見され(1899年)、またよく知られていたものの1つである。ここでは、電子の電荷と質量の比(比電荷)を定常磁場中における電子の運動の偏向を利用して測定する。ここで用いられる方法は、簡単な実験装置と初歩的な理論によってその近似値を求めることができ、そして目に見えない素粒子の運動を間接的に見ることができる。
(2)理論
磁場中(磁束密度 )を速度 で運動する電子(電荷を とする)に働く力は、
となるは確認されている。この力 は と に垂直であり、 の場合には、その大きさは である。この力のために電子は、加速度を受けるがこの加速度は、速度に垂直であるから電子の方向を変化させる。したがって電子は一定の速さの円運動をする。これを電子のサイクロトロン運動という。
また電子の運動方程式は、( =半径、 =円軌道の速さ、 =電子の加速度、 =電子の質量)
電子を電位差 の与えられた電極間で加速すると
上の式より電子の比電荷 は
今回の実験はヘルムホルツ・コイルなので、コイルの巻き数 、半径 、電流 とすると、
電子の比電...