『レポートの組み立て方』
はじめに
レポートとは、一般に研究・調査などの報告書、学生が提出する研究結果の小論文である。これらは、普通「誰か」の要求に応じて書くものである。
したがって特定の読み手を予想して書くことになる。
つまり、不特定多数の読者を想定して書く論文とは異なるのである。
レポート作成の手順
①問題点を探す
まず、課題に対しての予備知識を新聞や百科事典、文献などから得る。
立ち読み程度の大雑把な予備知識を背景にして、課題に関してどんなことが問題点になりそうかを、順序はかまわず思いつくまま書き並べてみるのが第一段階である。
②レポートの話題をえらぶ
レポートの話題としては、②であげたこれらのいくつかを一つにまとめた問題、あるいはいくつかに共通な問題点を選ぶのが適当である。話題の構成・選択に当たっては、次の四つのことを吟味する。
・その話題は自分にとって魅力的か。自分はそれに積極的な興味を感じるか。
・自分はそれについての何か考え(意見)があるか。
・自分はそれについてある程度の予備知識を持っているか。
・その話題についてのレポートは指定された長さ〔原稿枚数〕におさまりそうか。
③主題を決める
課題が与えられたとき、話題を選び、主題を決める。この時点での主題は仮の主題となる。しかし、資料調査を進めるうちに結論ないし主張を変更する必要が生まれれば、主題を修正し、新しい主題に変える。
④目標規定文(主題文)
①~③を終えたら、レポート作成の重要な手順として、その主題をもっとも簡潔な形に書いてみる。これを主題文あるいは目標規定文と呼ぶ。
目標規定文は何を目標としてこのレポートを書くのか、そこで自分は何を主張するのかを示した文である。これを明文化することには二つのメリットがある。
一字一句を吟味しながら簡潔な目標規定文を仕上げることは、主題を明確化することに役立つ。
目標規定文と照らし合わせながら資料を探索・取捨選択し、またレポートの構成を検討することによって、レポートがすっきりと筋の通ったものになる。
よって、レポート作成の際には、目標規定文を作り、それから、その目標に収束するように資料を集め、レポートの構成を考える。
しかし、目標をしっかりと定めた上で資料調査にかかっても、材料が集まるにつれて最初に考えた目標(結論)では具合がわるいことがわかってくる場合がある。
また、集めた資料を整理してレポートを書いていくうちに、議論の流れの必然として結論が当初に予定していたものとずれてくる場合もある。こういった場合は③でも述べたように主題を変更することが可能である。
※この場合はもう一度目標規定文を作る方が良い。
⑤材料を集める
レポート作成での材料の集め方はおよそ三つの方法で得られる。
自分の頭の中から引き出す。
実地調査(フィールドワーク・観察・実験など)
図書・雑誌・新聞などの文献から引用する。テレビ・ラジオのニュースその他を見たり聞いたりする。
統計
調査・観察・実験のように実際にモノ、コトに当たり、またヒトに当たって
目・耳・口を働かせて行うものの注意点に統計的な調査に関するものがある。
統計とは、同じことがらを多くの対象について調べてその結果を数字的に表すことである。しかし、これには判断を誤ると正しい答えは出ない。よって統計学の概念だけでもつかんでおくことが大切である。
インタビュー
専門家の方などにインタビューをする場合の注意点もいくつかある。
事前に相手の著作や業績を調べておく。
事前に先方の許諾を得る。こちらの身分、インタビューの目的を明らかにする。訪問前に質問事項を示すことが出来れば一番良い。
質問事項を書いたメモを手にしてインタビューする。質問事項はどうしてもその人に聞く必要があることを中心として、約束の時間内に収まるように計画する。
事後、必ず礼状を書き、レポートができたらそのコピーを送る。
図書・新聞・雑誌
文科系の研究レポートの材料は主にこの三つである。
これらから引用する場合、何処からとったのかを明確に記入しなくてはならない。
⑥色々の制約
レポートには原則として長さの指定がある。そのほかにもいろいろな制約がある。
引用について
レポートを書く場合一冊の本だけで作成してはならない。なぜなら、
レポートは元来、自分の立てた方針によって材料を集め、その資料にもとづいて自分の意見をまとめるべきものである。ところが
一冊の本だけに頼ってレポートを作ると、その本の著者の意見(即ち他人の意見)に支配されやすい。
仮にその本の著者の意見ではなく、その本に事実として記述されていることだけを引用するとしても、次の二つの問題が残る。
どの事実を選びだして記述するかの選択に、著者の考えが働いているはずである。
事実として記述してあるものの中にその本の著者が事実と信じているに過ぎないものが混入している恐れがある。
つまり、文献からの引用を主材料とするレポートは、一つの参考文献ではなく、色々の立場で書かれた文献を広く吟味した上で書かなければならないのである。
引用方法
原文の一部をそのまま引用する場合には、短い文の場合、「」で囲む。
例)著者は「・・・・・」と言っている。
長い文の場合は、アタマを一字か二字下げて書く。
例)○○○○は、
・・・・・・・・・(略)
と述べている。
引用する場合には著作権を念頭におく必要がある。
引用文は400字以内
引用文が自分の書く前文の二割以内
正当な範囲を超える場合には著作権者の許諾を得なければならない。また、写真や図面についても転載する場合には必ず著作権者の許可を得る必要がある。
⑦表題
レポートを作成するに当たって、主題を具体的に示す表題を作る。
⑧表と図
表や図はレポートの中で、しばしば重要な役割を演ずる。
表と図には必ず番号をつける。そして説明を書く。説明は原則として本文を読まないでもその表や図の中身を理解できるように書かなければならない。
⑨読み直し・修正
最後に読み直しをし、事実として書いてあることに客観性があるか。データは確実なものか。又、意見として書いてあることは誰の意見かが明記してあるか。
図や表などは本文に必要な材料となっているか。文の並び方は適切か。などのところを見直し修正する。
レポート構成
レポート構成は一般に序論・本論・結論の型である。しかし今後、概要・序論・本論・議論の型が一般になるであろう。と考えられる。
序論とは、読み手を本論に誘い込み、抵抗無く本論に入っていけるように準備を整えることを言う。
本論で取り上げる問題は何か→何故取り上げたか。
問題の背景はどんなものか。
レポート作成者はその問題についてどんな調査・研究を試みたか。
そしてどんな結論に到達したか。
本論は、調査・研究のやり方とそれによって明らかになった事実とを述べる部分。
結論とは、
本論の調査・研究の結果を簡明に列挙してまとめる。
それにもとづいて自分自身の見解を組み立てる。
そこで行った調査・研究の意義を述べ、将来の問題を展望する。
結論のあとには文献表・および付録が続く。
概要では、レポートの内容をもっとも簡潔に述べる。
文章を書くにあたって
読み手の立場になってみることが大切である。
誰がこれを読むか
読み手はどういう目的で何を期待し読むか
読み手は自分の書いたレポートについての予備知識はどのくらいあるのか
読み手が真っ先に知りたいのは何だろうか
この四つのポイントがある。この四つをよく考え、誰が読んでもわかり易く書かなければならない。
重点先行で書く。
報告・説明の文章や、ある考えを主張するのが目的の文章では、真っ先に一番大事なポイントを書くことが大切である。
説明文ではまず大づかみな説明によって外観を示してから細部の記述に入る。
意見の記述をするときは、
誰の意見なのかを明示し、自分の意見は出来るだけ明確に書き、意見の根拠となる事実と、その意見を立てるにいたる筋道を書かなくてはならない。
レポートで決してしてはならないことは、
他人の意見を自分の意見とも取れるような形で書くことである。
5、参考文献
・木下是雄 『レポートの組み立て方』筑摩書房1994年2月7日第一刷発行
2005年6月30日第二十八刷発行