現代政治学の先駆者ベントレーは、政治制度の形式的研究に終始していた伝統的政治学を、「死せる政治学」と批判し、『統治過程論』を発表した。政治とは利益を巡って形成される党派間対立と、統治機構による調整過程だと述べ、制度的研究よりも党派と政治の過程を重視すべしと述べた。
シカゴ学派のメリアムは、アメリカ政治学会会長就任演説で、「これまでと違ったアプローチの視角をとり、政治行動を研究の本来的な目的物とみなす」と予見した。これらの批判や予見の背後には、従来の政治哲学研究方法や素朴経験主義に基づく制度論的記述からの脱皮姿勢がある。科学は現実に存する事象を抽象化し、理論的因果関係を明らかにする責を担っている以上、制度論的アプローチや国家論的アプローチもその責の一端は果しているが、抽象化の方法自体が極めて概念的であるところに問題の所在がある。
「政治学は科学として成り立ちえるか」という問題意識は、一貫して政治学の歴史を支えた。政治学の科学性という科学としての問いに新しい政治学を模索し、政治学の基盤形成に寄与を果したのはメリアムやラスウエル、アーモンドといったシカゴ学派の政治学者であった。彼らの主張...