文学の効用について考察するわけだから、そもそも文学とは何か、文学にはどのような社会的意義があるのかという視点を踏まえて作り物語の流れを概観したい。
『竹取物語』に始まる作り物語だが、そもそもなぜ作り物語という形態をもつ文学が生まれたのだろうか。流れを概観する以上その発生に触れるのは当然であるし、文学とは何かという問題にも当然関わってくるだろうから、作り物語の発生状況を見ていきたい。
文学はもちろん作り物語発生以前にも存在していた。説話文学と和歌がそれぞれ散文文学と韻文文学の中心を担っていた。両者の最大の違いは、説話文学が叙事性を基調とするのに対し、和歌は抒情性を本位としていた点である。これが後発の散文文学にも影響し、初期の作り物語は抒情性が薄く、叙事性を基調としていた。同じ文学でも和歌と物語とは一線を画していたのである。
『竹取物語』に関して言えば、登場人物の心理などに関する細かい描写はあまりされずに抒情性が低く、叙事性が重視されていた。しかし、歌物語というジャンルが生まれるなど物語が徐々に和歌へと接近していくなかで、作り物語にもその影響が表れる。和歌の持つ叙情性を帯び始め、作品...