【0】 はじめに
本レポートでは、社会システムの一つとして「裁判のシステム」をとりあげようと思う。この裁判のシステムについては、法科大学院の設置を含む司法制度改革においても日本の英知たちにとりあげられてきたところではあるが、今一度自分なりに考えてみることにする。
参考資料
・ 最高裁判所HP http://courtdomino2.courts.go.jp/home.nsf
・ 司法制度改革審議会 http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/
・ 司法の病巣 産経新聞司法問題取材部
【1】 諸要素及びその関係
(1) 三審制
第一審,第二審,第三審の3つの審級の裁判所を設けており、当事者が望めば原則的に3回までの反復審理を受けられるという制度を三審制と呼ぶ。第一審から第二審への不服申立てを控訴、第二審から第三審への不服申立てを上告という。また、控訴と上告を併せて上訴という。
(2) 審級制
個々の裁判所はそれぞれ独立して裁判権を行使するため、下級審の裁判所が上級審の裁判所の指揮監督を受けることはない。ただし上告された件に関しては、上級審の裁判所は下級審の裁判所の裁判の当否を審査する権限を有しており、上級審の裁判所の判断が下級審の裁判所の判断より優先する。このような制度を審級制度と呼ぶ。
(3) 裁判所
憲法第76条第1項に「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところに設置する下級裁判所に属する。」とあるようにわが国では、最終審・最上級の裁判所として最高裁判所を1つ設け、裁判所法により下級裁判所として高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の4種類の裁判所を設けている。
【0】 はじめに
本レポートでは、社会システムの一つとして「裁判のシステム」をとりあげようと思う。この裁判のシステムについては、法科大学院の設置を含む司法制度改革においても日本の英知たちにとりあげられてきたところではあるが、今一度自分なりに考えてみることにする。
参考資料
最高裁判所HP http://courtdomino2.courts.go.jp/home.nsf
司法制度改革審議会 http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/
司法の病巣 産経新聞司法問題取材部
【1】 諸要素及びその関係
(1) 三審制
第一審,第二審,第三審の3つの審級の裁判所を設けており、当事者が望めば原則的に3回までの反復審理を受けられるという制度を三審制と呼ぶ。第一審から第二審への不服申立てを控訴、第二審から第三審への不服申立てを上告という。また、控訴と上告を併せて上訴という。
(2) 審級制
個々の裁判所はそれぞれ独立して裁判権を行使するため、下級審の裁判所が上級審の裁判所の指揮監督を受けることはない。ただし上告された件に関しては、上級審の裁判所は下級審の裁判所の裁判の当否を審査する権限を有しており、上級審の裁判所の判断が下級審の裁判所の判断より優先する。このような制度を審級制度と呼ぶ。
(3) 裁判所
憲法第76条第1項に「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところに設置する下級裁判所に属する。」とあるようにわが国では、最終審・最上級の裁判所として最高裁判所を1つ設け、裁判所法により下級裁判所として高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の4種類の裁判所を設けている。
図1 : 各裁判所の関係
図2 : 各裁判所の設置場所
最高裁判所
最高裁判所は憲法によって設置された我が国における唯一かつ最高の裁判所である。裁判は全裁判官で構成する大法廷と5人ずつの裁判官で構成する三つの小法廷において行われる。 上告の理由は憲法違反または判決に影響を及ぼすことが明らか(刑事事件の場合は判例違反)な件に限られている。最高裁判所には,我が国で唯一の最高の裁判所としての司法裁判権が与えられている。また最高裁判所は憲法の「司法の独立」の精神により行政府及び立法府からの干渉を排除し,裁判所の運営を自主的に行っている。
(5) 高等裁判所
高等裁判所は日本の8箇所の大都市(東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松)に置かれているほか6箇所の都市に支部が設けられている。 高等裁判所は,高等裁判所長官及び判事によって組織されている。東京高等裁判所は,さらに,公正取引委員会や特許庁のような準司法的機関の審決の訴訟について第一審裁判権を持っている。
(6) 地方裁判所
地方裁判所は全国に50箇所あり支部の総数は203であり、他の裁判所が第一審専属管轄権を持つ特別なものを除いて,第一審事件のすべてを裁判できる。
(7) 家庭裁判所
家庭裁判所は法律的に白黒をつけるのではなく、紛争や非行の背後にある原因を探りどのようにすれば家庭や親族の間で起きたいろいろな問題が円満に解決され非行を犯した少年が健全に更生していくことができるのかということを第一に考えて適切妥当な措置をとるために創設された裁判所である。そのため家庭裁判所調査官が置かれ、心理学・教育学・社会学などの人間関係諸科学の観点から調査調整を行う。
(8) 簡易裁判所 全国に438箇所ある。 民事事件については訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件について、また、刑事事件については,罰金以下の刑に当たる罪及び窃盗,横領などの比較的簡単な罪の訴訟事件等について,第一審の裁判権を持っている。
【2】 修正を迫られている点
裁判のシステムについて修正を迫られている点を列挙する。 ①審理期間が長い ②国民からのキョリが遠い ③専門性の高い裁判が滞る
①に対する提案
計画審理の推進
最初に終期を見通したプランをたて、そのプランに従って審理する(計画審理)を推進すればよい
証拠収集手続の拡充
当時者が早期に証拠を収集するための手段を増やさなくてはならない。証拠収集の手続きも煩雑なのでもっとたやすく証拠を集められるようにすれば、自然と審理期間も短くなると考えられる。
人的基盤の拡充
法曹人口が少ないことが最大の理由と考えられる。特に裁判官と弁護士が足りない。裁判官一人の負担が大きすぎるため、審理が進まない。また、負担が大きすぎるゆえただでさえ職業柄閉鎖的にならざるおえない裁判官がよりいっそう閉鎖的になり、精神的に病むケースが増えている。そうすると審理ペースがもちろん落ちるので、法曹人口を拡充するとともに、裁判官の(とくに精神面の)ケアを推し進めなければならない。また、弁護士が少ないので、事件が発展し大事になるまで相談にいかない(弁護士の少なさゆえ料金も独占状態ににあり高騰していることもある)ので、審理に時間がかかる。現在法科大学院の設置などで対策をとっているように、早急に法曹人口を増やすべきである。
集中審理(連日開廷の確保)
特に刑事裁判においては集中審理がのぞまれる。司法制度改革審議意見書にもあるように裁判員制が導入されればなおさらのことである。先ほどの計画審理とこの集中審理がともに実現すれば、大幅な審理時間の短縮になるはずである。
被疑者と被告人の両段階を通じた一貫した弁護体制
現在被疑者の段階で弁護人がつくことは稀である。ついたとしても被告人と被告人の両段階で弁護体制がかわることが多い。そのため同じことを繰り返すなど時間のロスがあると思われるので、両段階での一貫した弁護体制をとるべきである。
裁判員制の導入
意見書では「国民的基盤の拡充」の項目で挙げられていた裁判員制であるが、うまいこと組織化すれば審理期間の短縮にもつながると思う。裁判官と同等の発言力を市民がもつわけであるから、裁判官の負担は単純に考えれば減るはずである。しかし、法律知識をもたない一般市民への説明や解説の手間がかかりすぎるならば、逆に審理期間は長引いてしまう。しかし意見書によれば、裁判員制度を導入するのは社会的関心の高い凶悪事件に限るとあるので、どっちにしても数年かかる事件ならば、やはり審理期間の短縮要素の方が強いのではないかと思われる。
②に対する提案
利用者の負担軽減
国民が裁判システムを利用しにくい最大の理由はその費用の高さにあると思う。弁護士に対する報酬もさることながら訴訟費用そのものが高い。利用者の負担費用の軽減すべく、提訴手数料はスライド制を維持しつつ必要な範囲で低額化を行うべきである。訴訟の活用を萎縮させない範囲で、弁護士報酬の一部を敗訴者負担にするのも手である。しかしこれでは負けたら2倍払うということに他ならないので、訴訟費用保険を開発し普及するのがよいと思う。もしくは奨学金制度のように低利子貸し出しなどもいいかもしれない。あと、単純に民事法律扶助を拡充するのも有効である。
裁判所の利便性の向上
裁判所からの司法の情報が国民に届いていない、というのが現状である。まずはアクセスポイントを充実させて、司法に関する総合的な情報提供を強化しなければならない。また、ITすなわち情報通信技術を裁判所等にも導入すべきである。さらに夜間サービスの拡大と休日サービスの導入そしてそれらの国民への周知をするべきである。サービスということばは裁判には不適当かもしれないが(意見書では「サービス」を用いている)、「国民の為の」という意味でサービス業的精神も必要なのではないかと思われる。
ADRの拡充、活性化
ADRに関する共通的な制度基盤を整備すべきである。特に、特許関連は専門性の点から言ってもADRの充実はのぞましい。
司法教育
司法を「知らない」国民が多い。それは裁判所などの「伝える」行為が弱かったというのも原因の一つではあるが、学校などの「教える」という行為が弱かったのもまた原因である。学校教育などにおける司法についての学習機会を充実させるべきである。
③に対する提案
専門委員制度などの制度
専門的知見を要する事件とは主に、知的財産権関係、医事関係、建築関係、金融関係の事件のことであるが、これらの事件に関し、現行法では専門家の関与形態は限定的であるが、もっと早い段階から関与することが望ましい。その為に専門員制度などを導入すべきである。
鑑定制度の改善
これらの事件には鑑定の活用が不可欠であるが、実際は適切な鑑定人を見出し鑑定を引き受けてもらうことが困難であるといわれる。そこで、鑑定人名簿の整備などを含め、鑑定制度の改善が必要である。