「自然」という言葉には、実に様々な意味があり、多義的である。それは人間の本来あるべき姿、何からも影響されない真の姿としての内的自然を意味する場合や、山、野原、川、海などのように美しい地球環境そのものとしての外的自然を意味する場合がある。特に後者でいう「自然」の意とは、生命の大切さや大自然のかけがえのない美しさ、そこから生まれる安らぎや温かい心、たくましい生命力などを与えてくれる、私たち人間が生きていくうえで、なくてはならないものである。そして小原國芳の提唱する全人教育における自然尊重の「自然」もこれにあたる。人は美しい自然との触れ合いのなかで人を学び、また人為の醜さも知ることができる。ここでいう「自然」とは、「全人教育としての場」なのである。
では、全人教育としての場である自然の教育的意味とは、どのようなことなのだろうか。
例えば、草木や花、土、太陽、水などの自然は、理科教育にとって無限の資料と機会を与えてくれるものであり、雄大な自然そのものが偉大な教育をしてくれる存在となっている。また自然を愛することにより、心理を探究せしめ、美を愛好していることになるのである。つまり全人教育に...