イタールがアヴェロンの野生児に対して行った教育についてのまとめと分析
本レポートでは、イタールがまとめたアヴェロンの野生児に関する報告書や、実験の解説をもとに、最も変化が激しかったといわれる最初の9ヶ月間に、アヴェロンの野生児に対してどのような教育が行われ、それがどのような効果をもたらしたのかを分析することにする。
1801年に提出されたイタールの最初の報告書(梅根ら,1983)によると、1800年に南フランスのサンセルナン村の近くの森から、推定年齢十一、二歳の男の子が発見された。二足歩行をすることはできたが、ボロボロのシャツを体に巻いているだけのほぼ裸の状態であり、話すことができずに意味のない叫び声を出す獣のようであったと報告されている。最初は村の名士であり、政府委員として勤めていた役人のコンスタンがその少年を引きとった。しかし、すぐにサンセルナン村から二十マイル離れたサンタフリクという名前の町の孤児院に引き取られることになる。この孤児院では、ジョゼフという名前で呼ばれていた。コンスタンは孤児院に彼を送ったとき、「この子は恐らく聾唖者であろう」と書いた手紙を添えている。このときの...