現代宗教の「疎外」と「脱疎外」、その諸作用―トルコの事例から
序
第一次大戦後の1923年、西欧列強との対抗の中で、宗教色をできるだけ排し徹底的な西欧的世俗化・近代化の過程で、民族的結束のもと「国民国家」として新たに成立したトルコ共和国だが、現在では再びイスラーム的な共同体意識、結束意識が高まりつつある。なぜ今になって「世俗国家」トルコにおいてイスラームが再興しているのか、またそれは国民意識や現代国際関係にどのような作用を及ぼしているのか、以下で分析していきたい。
その際有用となるのが宗教の諸機能、特に「疎外」と「脱疎外」という機能である。「疎外」とは、人間が作り出した諸観念や概念が人間自身から独立し、逆に人間を支配・規定し、人間が本来あるべき自己の姿を失ってしまう、という状況を意味する。一方「脱疎外」とは、上述のような「疎外」状況から脱し、人間の「本来のあり方」を取り戻すことをいう。
宗教は根本的に「疎外」と「脱疎外」の両義性を内包するものであるが、現代においてそれはどのように作用しているのか、考察するとともに、現代における宗教の存在意義について検討していきたい。
1. 世俗主義...
題材として、現代トルコのイスラームの状況を取り上げ、グローバル社会下で宗教がどのような機能を果たしていくかについて考えていきます。