「笑い」とイデオロギー

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    資料紹介

    1、はじめに
     イデオロギーとは何か。
     一般的には「世界や人間について人々が抱く、体系的な信念・観念」
     とされているが、統一的な定義はないようだ。ただの壁の染みだとか、魚の模様だとかが「人の顔だ」と誰かが主張すれば、なるほど顔に見えてくる。これもある意味簡単なイデオロギーの例といえる。このイデオロギーの形成に大きく関与するものとして、鷲田こや小彌た太(1985)は「言語」を挙げている。「言語の分析なしにイデオロギー的生産を、そして意識の生産を十全かつ基本的に解明することは不可能である(p.154)」という。しかし言語外のもの、例えば「笑い」もまた同様に、イデオロギー的社会構造の中では強い影響力を持っていると思われる。言語よりももっと無意識のうちに表れるものであるため、より心理的な面が率直に反映されているのではないだろうか。ここで言う「笑い」とは、うれしいときや楽しいときのそれではなく、アイロニー的な、批判的な意味を持ったものである。
     人はどのようなときに、なぜ笑うのか。そして、それはイデオロギーとどのように関係しているのか。事実性のないイデオロギーから抜け出すことは、果たして可能なのか。
    2、イデオロギーが生む「笑い」
     しばしば人は「笑う」という点において他の動物と区別される。この人間特有の表現方法「笑い」が生じる要因については、17世紀にはホッブズ(1971)が、そして最近ではマルセル・パニョル(1953)が「相手に対する優越感」によるものだと提言している。例えば、ここに上京したばかりの一人の地方出身男性がいるとする。彼の話し方のアクセントは、東京のそれとは異なっている。すると周囲の人は、彼のその話し方の中に滑稽味を見出して笑いを漏らすだろう。「自分たちは正しい発音を知っているから優越感に浸って笑うのだ」とパニョルは言う(1953)。

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    1、はじめに
    イデオロギーとは何か。
    一般的には「世界や人間について人々が抱く、体系的な信念・観念」
    とされているが、統一的な定義はないようだ。ただの壁の染みだとか、魚の模様だとかが「人の顔だ」と誰かが主張すれば、なるほど顔に見えてくる。これもある意味簡単なイデオロギーの例といえる。このイデオロギーの形成に大きく関与するものとして、鷲田(1985)は「言語」を挙げている。「言語の分析なしにイデオロギー的生産を、そして意識の生産を十全かつ基本的に解明することは不可能である(p.154)」という。しかし言語外のもの、例えば「笑い」もまた同様に、イデオロギー的社会構造の中では強い影響力を持っていると思われる。言語よりももっと無意識のうちに表れるものであるため、より心理的な面が率直に反映されているのではないだろうか。ここで言う「笑い」とは、うれしいときや楽しいときのそれではなく、アイロニー的な、批判的な意味を持ったものである。
     人はどのようなときに、なぜ笑うのか。そして、それはイデオロギーとどのように関係しているのか。事実性のないイデオロギーから抜け出すことは、果たして可能なのか。
     2、イ...

    コメント1件

    ea51685 購入
    少し難しい気がします。
    2006/12/04 22:48 (18年前)

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