多額の借金にあえぎ、サラ金業者から再三の取り立てを受けていたAは、まず、自分の時価10万円の時計を、かつて芸能人Bが使用していた時計と称して、Cに10万円で売却し、同日、さらに、X信販会社の会員としてクレジット・カードの発行を受けていたAは、X信販会社の加盟店であるYデパートにおいて、現金を得るための質草にしようと、代金支払いの意思も能力もないのにクレジット・カードを使用して約30万円の電化製品を購入した。Aの罪責を論ぜよ。
1、本問において①Aは、自分の時計を、かつて芸能人Bが使用していた時計と称し、時価相当額でCに時計を売却した。また、②Aは代金支払いの意思も能力もないのにX発行のクレジット・カードを使用し、Yにおいて電化製品を購入した。
つまり本問において、Aの行為①は真実に反する告知をして相手方を誤信させ代金を交付させたとして詐欺罪(刑法246条)、同じくAの行為②はクレジット・カードの不正使用につき詐欺罪の罪責に問われるかが問題となる。
2、そもそも詐欺罪とは、人を欺いて錯誤を生ぜしめ、その錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財物や財産上の利益を交付させる罪である。つまり...