体育理論、現代生活における運動を考え体力の向上を目指す

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     はじめに体力という言葉の定義についてであるが「人間のあらゆる活動の基礎となる能力 」「人間が生活力に満ちた生命を完了するための能力 」「健康を作る基盤」など、様々な定義がある。学者によっては身体能力に加え精神面も考慮する者や、体力と精神力を分けて考える者などがおり、言葉の意味が必ずしも一定の内容を示しているわけではない。本課題を考える上で私は体力という言葉を精神力も含めた広義の意味で解釈するのが適当と考える。特に上述の「健康を作る基盤」を中心に考える。
     健康という言葉については世界保健機構の保険憲章に「健康とは、肉体的、精神的、および社会的に完全に良好な状態であって、単に疾病または病弱の存在しない、ということだけではない。 」と定義されている。学者の考えでは健康について「与えられるものではなく勝ち取るもの。 」「病気を取り取り除くことが唯一の健康への道ではない。 」などの様々な表現の方法があるが共通して言えることは病気の存在を否定することが健康ではなく、精神的な面も含めて人が生きていく上で必要な能力が全般的に良好な状態を指していることである。
    現代生活における社会情勢、労働環境、自然環境、食生活、運動習慣などと、過去におけるそれらとを比較しながら現代生活と体力との関係について記述する。
    まず、社会情勢についてであるが第2次世界大戦が終了した直後は食糧不足、物不足、荒廃による衛生環境の悪化などがあった。この様な状況で人々は「物の豊かさ」を追求するようになる。 「アメリカに追いつけ追い越せ 」「所得倍増」などの目標を掲げて戦後復興、高度経済成長期を経て現在に至る。
    労働環境については高度経済成長期には技術の躍進、労働の効率化などにより著しい変化が生じた。工場では流れ作業による単純労働が繰り返されるため労働者は緊張により慢性過労性の神経疲労を引き起こすことになった。また、科学技術の向上により労働形態が変化し、極端な身体能力の低下を引き起こし虚血性心臓疾患、生活習慣病などを引き起こすこととなった。産業については戦後(50年台後半から)第1次産業が著しく減少し、第2次、第3次産業が大きく増加した。このことも運動不足の原因となっている。( 教科書11頁抜粋)人々は第2次世界大戦後に復興に重点を置き、次にアメリカを目標として急速に経済を成長させたが、この過程での労働の効率化、豊かさの追求などが結果的に現代生活における体力の低下の一因となってしまった。
    産業の変化は事前環境にも影響をもたらし公害などを引き起こした。公害については戦後ばかりでなく、明治の足尾鉱毒事件、第1次大戦後の工場問題などがあったが当時は健康問題としての権利主張は大きくなかった。工場などが排出する化学物質の影響で魚のメス化、人の精子の減少等、普通の状態では考えにくい変化が生じた。さらに、家の壁紙の接着剤によるシックハウス症候群など身近なところでも人々の健康を脅かす事例がある。現代人の体力を考える上でこれらの現実を無視することはできない。
    食生活について戦後から1960年まで低栄養時代が続いたが、経済成長、国民所得の増大とともに栄養の摂取状況は安定していった。しかし、労働状況、生活習慣などの変化により食生活に不規則、過食、欠食、偏食が見られるようになった。私もそうであるが朝食をとらない人が増えている。食生活の欧米化により糖質の低下、動物性脂質の摂取量が増加傾向を示すようになった。高血圧などに関連深いとされる食塩の摂取は80年代後半までは栄養改善の推進により減少傾向にあったが、近年は増加傾向にある。食生活は生活習慣病の誘因となるため健康を考える上で欠くことはできない。
    運動習慣については過去と比較して体を動かす機会が全体的に減少してきている。日常生活では科学技術発展による家事の簡略化、省力化、テレビの普及などがその原因として挙げられる。労働環境では前述の通り。結果的には利便性の追求が人々から体を動かす機会を減らしている。運動習慣、健康に対する意識からも現代人が運動不足であることは否めない。適度で定期的な運動は各種の疾病を改善することが研究報告で明らかになっている。その逆に運動不足は各種の疾病の原因となる可能性もある。
    最後に全体を通して言えることとして現代人は過去の人と比較し体力が無いということである。冒頭に述べたように私は体力という言葉を「健康を作る基盤」と考える。前述の社会情勢から運動習慣に至るいずれの考察においても現代人に健康を作る基盤があるとは言えない。逆に生活習慣病など「不健康な体を作る基盤」がある。現代生活において体力を良好な状態に維持するのは余程意識的に行動しない限り難しいことである。
    体育理論
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