この本の著者ヘレン・E・フィッシャーは次のように述べている。チンパンジーやゴリラなど人類に近い動物の性行動の観察から、パートナーを固定しての性行動というのは自分の遺伝子を後世にのこすという意味合いから雌雄双方にとって有利であるからで、本来的には子供が独り立ちできるようになるまでの一次的なものである。そしてパートナーを換えずに次の子供を作るというのは、生き残りに有利な遺伝子的多様性の追求という意味合いから言えば不合理な戦略である。したがって、子育てが終わったら離婚して別の相手を探すほうが自然である。それが現在のような恒久的なパートナーシップに変化したのは農耕という生産手段のためである。農耕に携わる男女は土地という不可分な経済基盤に依存しているので、妻あるいは夫が分かれて他の土地に流れて行くということができない。現存する狩猟民族の調査結果をみても、定住農耕民にくらべて著しく離婚率が高いのである。そして、現在先進国といわれる国々で離婚率が高くなっているのは、産業基盤が農耕から工業へ、工業から第三次産業へと移行するに従い個々人の財産が再び分割可能なものになって来たからであり、とりもなおさず「農耕でゆがめられてきた人間のセックスが生物として正常な形態を取り戻しつつある現われ」である。と述べている。
現在の離婚率の増加理由は、「人間のセックスが生物として正常な形態を取り戻しつつある現われ」である、と言えるであろうか。私は、そうは思わない。また、ヘレン・E・フィッシャーはこうも言った。「離婚には経済的自立がものを言う」と。私もこのことには同意する。現在における離婚率の増加理由は女性が社会に進出し、経済的にも独立することができ、男性の収入に頼らずとも一人で生きていく、もしくは子供を育てていくことが出来るようになったことが第一の理由であると思う。
レポート、社会学、ヘレン・E・フィッシャー、愛、結婚、離婚、Helen E. Fisher.
「愛はなぜ終わるのか」を読んで
この本の著者ヘレン・E・フィッシャーは次のように述べている。チンパンジーやゴリラなど人類に近い動物の性行動の観察から、パートナーを固定しての性行動というのは自分の遺伝子を後世にのこすという意味合いから雌雄双方にとって有利であるからで、本来的には子供が独り立ちできるようになるまでの一次的なものである。そしてパートナーを換えずに次の子供を作るというのは、生き残りに有利な遺伝子的多様性の追求という意味合いから言えば不合理な戦略である。したがって、子育てが終わったら離婚して別の相手を探すほうが自然である。それが現在のような恒久的なパートナーシップに変化したのは農耕という生産手段のためである。農耕に携わる男女は土地という不可分な経済基盤に依存しているので、妻あるいは夫が分かれて他の土地に流れて行くということができない。現存する狩猟民族の調査結果をみても、定住農耕民にくらべて著しく離婚率が高いのである。そして、現在先進国といわれる国々で離婚率が高くなっているのは、産業基盤が農耕から工業へ、工業から第三次産業へと移行するに従い個々人の財産が再び分割可能なものになって来...