この小説は何年間も父と憎み合ってきた主人公の順吉が、ついに父親と和解するという話である。作者の志賀直哉自身も父親との長年の不和とその後の和解を体験しており、その体験がベースになった小説である。この小説の中では、どういう理由で順吉が父親のことを長年に渡って憎んでいるかは書かれていない。この物語の中ではそれは重要なことではなく、兎に角順吉は父親を嫌っているのであった。その上、順吉は父の京都来遊に面会を拒絶し、長女の誕生とその生死をめぐって父の処置を憎んだ。また、作家である順吉は、父親と自分との不和を小説に書こうとしたが、父親に対する私怨を小説の中で晴らすようなことはしたくないという気持ちに筆の進みを阻まれながらも父親との不和を描いた小説を書こうとするのだが、父親と涙を流しながら和解するシーンが頭に浮かんでしまうのであった。順吉は父の態度やちょっとした発言に腹の底から腹がたっただの、やれこんなこと言われて、不愉快だっただの、面会を拒絶するだのと些細なことで腹をたてている。その主人公の行動を客観的にみるとただいじけているだけの様にみえる。
『和解』を読んで
この小説は何年間も父と憎み合ってきた主人公の順吉が、ついに父親と和解するという話である。作者の志賀直哉自身も父親との長年の不和とその後の和解を体験しており、その体験がベースになった小説である。この小説の中では、どういう理由で順吉が父親のことを長年に渡って憎んでいるかは書かれていない。この物語の中ではそれは重要なことではなく、兎に角順吉は父親を嫌っているのであった。その上、順吉は父の京都来遊に面会を拒絶し、長女の誕生とその生死をめぐって父の処置を憎んだ。また、作家である順吉は、父親と自分との不和を小説に書こうとしたが、父親に対する私怨を小説の中で晴らすようなことはしたくない...