相殺と差押・債権譲渡
1 問題の本質
反対債権に第三者の権利関与があった場合に相殺をもって対抗できるかが、相殺と差押の問題
【1】一方では、そのような問題にかかわる唯一の規定である511条の解釈論
→ しかし、511条は、差押の場合における法定相殺に関する規定であり、この規定だけでは、第三者の権利関与の場合のすべてを理論的に捉えることはできない。
また、511条だけでなく、債権譲渡における468条2項でも同様の問題があることから、両規定の関係も問題である。
従って、単にそれぞれの規定の単純な解釈ということにとどまらず、第三者の権利関与の諸形態との関係で相殺制度をどのように位置づけるべきかという、相殺の第三者効という相殺法理の本質論にかかわっての視点から検討することが重要となる。
【2】他方では、相殺の担保的機能の解明
→ この点、反対債権に第三者の権利関与があった後も相殺が認められるとなると、相殺を行う者の債権はこの反対債権によって弁済を受けることになり、その反対債権は担保目的物としての機能を果たすことになる。従って、反対債権に権利関与した第三者の利益とのかかわり合いにおいて、相
相殺と差押・債権譲渡
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相殺と差押・債権譲渡
1 問題の本質
反対債権に第三者の権利関与があった場合に相殺をもって対抗できるかが、相殺と差押の問題
【1】一方では、そのような問題にかかわる唯一の規定である511条の解釈論
→ しかし、511条は、差押の場合における法定相殺に関する規定であり、この規定だけでは、第三者の権利関与の場合のすべてを理論的に捉えることはできない。
また、511条だけでなく、債権譲渡における468条2項でも同様の問題があることから、両規定の関係も問題である。
従って、単にそれぞれの規定の単純な解釈ということにとどまらず、第三者の権利関与の諸形態との関係で相殺制度をどのように位置づけるべきかという、相殺の第三者効という相殺法理の本質論にかかわっての視点から検討することが重要となる。
【2】他方では、相殺の担保的機能の解明
→ この点、反対債権に第三者の権利関与があった後も相殺が認められるとなると、相殺を行う者の債権はこの反対債権によって弁済を受けることになり、その反対債権は担保目的物としての機能を果たすことになる。従って、反対債権に権利関与した...