「DNAは遺伝子の本体であり、二重らせん構造をとっている」。現在、このことは中学生でも知っているような、生物学の常識である。しかし、DNAの二重らせん構造が発見されたのは、実は1953年、今からたったの50年ほど前でしかない。
今回『二重らせん』を読んで、この二重らせん構造の発見に関して、なんと熾烈な競争があったことか、と驚いた。ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリックがこの競争を勝ち抜き、DNAの二重らせん構造を1番最初に解明できたのは、この研究に対する強い執着心と忍耐強さのおかげだと思う。当時、DNAが遺伝子の正体であることは実験的に示されていたが、複雑な遺伝情報を単純な物質である DNA が担っているという考えには批判も多く、複雑なタンパク質こそが遺伝物質であるという意見も強かった。何か新発見をするためには、従来の常識をも覆すことのできる勇気が必要なのだ、と強く思った。
また、この本には、研究成果よりも、研究生活やワトソン周辺の人々のことなど、プライベートな生活に重点がおかれている。研究室の同僚との確執や批判なども、包み隠さず書いている。それゆえに、現実の研究生活とはどのようなものかが、ありありと伝わってきた。何かを研究するときには、どんな小さな情報でもキャッチするように心がけること、そして様々な人の意見を聞いた上で、それを受け入れるか受け入れないかを判断すること、何よりもその研究に関しては誰にも負けない、という強い意思と執着心を持つこと。生命科学系の研究者を目指す私に、この本は研究者としてのこうした心構えを教えてくれた。
現代、DNAの二重らせん構造が明らかになったおかげで、遺伝子治療、遺伝子診断、遺伝子組み換えなど、社会において急速な技術革新が進んでいる。この20世紀最大ともいえる発見には、多くの人の様々な思いがつまっており、彼らの努力はこの先も決して色あせることなく、鮮やかであり続けるだろう。
『二重らせん』を読んで
「DNAは遺伝子の本体であり、二重らせん構造をとっている」。現在、このことは中学生でも知っているような、生物学の常識である。しかし、DNAの二重らせん構造が発見されたのは、実は1953年、今からたったの50年ほど前でしかない。
今回『二重らせん』を読んで、この二重らせん構造の発見に関して、なんと熾烈な競争があったことか、と驚いた。ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリックがこの競争を勝ち抜き、DNAの二重らせん構造を1番最初に解明できたのは、この研究に対する強い執着心と忍耐強さのおかげだと思う。当時、DNAが遺伝子の正体であることは実験的に示されていたが、複雑な遺伝情...