カルシウムイオン濃度は、細胞外では1〜2mMに、細胞内ではその約1000分の1の濃度の、50〜100nMに維持されている。様々な種類のカルシウムチャネルが開くことにより、細胞内に濃度1万倍のカルシウムイオンが流入する。また、細胞内小器官の小胞体、ミトコンドリアにも高濃度のカルシウムイオンが貯蓄されており、特に小胞体にはカルシウムイオンが一部結晶化して、効率よく貯蓄されている。細胞内のカルシウムイオン濃度が1μMまで上がると、受精、細胞増殖、外分泌、内分泌、筋収縮、細胞死、神経伝達物質放出、シナプス可塑性など、カルシウムイオンに敏感なたくさんの反応が起こる。しかし、細胞内のカルシウムイオン濃度が上がりっぱなしになると、タンパク質分解酵素の働きなどで細胞が溶けてしまうこともある。したがって、細胞内のカルシウムイオン濃度が上がったら、速やかにカルシウムイオンを細胞外へくみ出すポンプも様々ある。
細胞内でのカルシウムイオン濃度の上昇による、細胞全体への影響はまだ分かっていないが、個々のタンパク質の活性への生化学的な影響は分かっている。たとえば、カルシウムイオン濃度が上がると、核の中の転写状態が変わり、タンパク質合成が開始される。DNA転写因子であるNFAT、NFKBについてみると、NFAT活性はカルシウムイオン濃度上昇が高頻度に起こるほど高くなるが、NFKB活性はカルシウムイオン濃度上昇の頻度によらず高くなる。これより、タンパク質ごとにどのような時間的・空間的パターンでカルシウムイオン濃度が変化するかによって、どのように活性が変わるかが異なるといえる。
たとえば、神経細胞であるプルケー細胞においては、電位依存性チャネルの開閉により、300ミリ秒間でカルシウムイオン濃度が上昇して、また元に戻る。
カルシウムイオン濃度は、細胞外では1~2mMに、細胞内ではその約1000分の1の濃度の、50~100nMに維持されている。様々な種類のカルシウムチャネルが開くことにより、細胞内に濃度1万倍のカルシウムイオンが流入する。また、細胞内小器官の小胞体、ミトコンドリアにも高濃度のカルシウムイオンが貯蓄されており、特に小胞体にはカルシウムイオンが一部結晶化して、効率よく貯蓄されている。細胞内のカルシウムイオン濃度が1μMまで上がると、受精、細胞増殖、外分泌、内分泌、筋収縮、細胞死、神経伝達物質放出、シナプス可塑性など、カルシウムイオンに敏感なたくさんの反応が起こる。しかし、細胞内のカルシウムイオン濃度...