志賀直哉の『暗夜行路』の一部分と谷崎潤一郎の『異端者の悲しみ』の一部分を読み比べた。すると、どちらも家の様子を表した内容であるのだが、『暗夜行路』の方はすっきりと、分かりやすい印象を受けた。『異端者の悲しみ』の方は、長く、難解な印象を受けた。これらの文章の何が
異なる印象を与えるのだろうか。
様々な要素が考えられるが、幾つかに絞って考えることとする。最初に、文に関して考える。文の数、長さ、読点の数を比較する。次に、漢字、仮名の割合を比較する。さらに、名詞、形容詞、動詞、助動詞の比較も行いたい。
それぞれの比較の結果を表にすると、以下のようになる。
表1.文の長さ
「暗夜行路」 「異端者の悲しみ」
文字数(合計) 328 321
一文の文字数(平均) 41 80.25
一文の文字数(最大値) 64 130
一文の文字数(最小値) 20 43
表2.句読点
「暗夜行路」 「異端者の悲しみ」
句点 8 4
読点 16 13
表1では句読点を含まずに、文字数を数えた。全文字数は、『暗夜行路』と『異端者の悲しみ』で特に大きな差はない。しかし、一文の文字数の平均を見ると、『暗夜行路』では41、『異端者の悲しみ』では約80で、『異端者の悲しみ』が『暗夜行路』の2倍近い数値になっている。最大値と最小値を見ても、大きく差がでている。
表2の句点から、『暗夜行路』は8文、『異端者の悲しみ』は4文から成っていることが分かる。しかし『異端者の悲しみ』は『暗夜行路』の半分の4文しかなく、短いにもかかわらず、読点は『暗夜行路』よりも少ない。
表3.漢字、仮名の割合
「暗夜行路」 「異端者の悲しみ」
漢字 126 38% 132 41%
仮名 202 62% 189 59%
漢字と仮名の割合は、特別大きな差ではないが、『異端者の悲しみ』の方が多少漢字が多い。
『暗夜行路』と『異端者の悲しみ』の比較
志賀直哉の『暗夜行路』の一部分と谷崎潤一郎の『異端者の悲しみ』の一部分を読み比べた。すると、どちらも家の様子を表した内容であるのだが、『暗夜行路』の方はすっきりと、分かりやすい印象を受けた。『異端者の悲しみ』の方は、長く、難解な印象を受けた。これらの文章の何が
異なる印象を与えるのだろうか。
様々な要素が考えられるが、幾つかに絞って考えることとする。最初に、文に関して考える。文の数、長さ、読点の数を比較する。次に、漢字、仮名の割合を比較する。さらに、名詞、形容詞、動詞、助動詞の比較も行いたい。
それぞれの比較の結果を表にすると、以下のようになる。
表1.文の長さ
「暗夜行路」「異端者の悲しみ」文字数(合計)328321一文の文字数(平均)4180.25一文の文字数(最大値)64130一文の文字数(最小値)2043表2.句読点
「暗夜行路」 「異端者の悲しみ」 句点 8 4 読点 16 13
表1では句読点を含まずに、文字数を数えた。全文字数は、『暗夜行路』と『異端者の悲しみ』で特に大きな差はない。しかし、一文の文字数の平均を...