設問1.
Aは、一級河川に指定されているE川に漁業権を有し、漁業を営む者であるが、最近、E川上流に立地する製紙工場群から流出するヘドロによって漁業に壊滅的な打撃を受けた。この場合、
(イ) Aは、県知事が製糸工場に対し水質汚濁防止法による規制権限を適切に行使しなかったことを理由として、県に対し国賠法一条により損害賠償を請求できるか。
(ロ) また、ヘドロの流入によって河川が物的瑕疵をもつにいたったとして、河川管理者たる国土交通大臣の属する国に対し、国賠法二条により損害賠償を求めることができるか。(原田309頁)
- (イ)について
Aは、県知事が製紙工場に対し水質汚濁防止法による規制権限を適切に行使しなかったことを理由として、県に対して国家賠償法1条に基づき、損賠賠償請求をなし得るか。国家賠償法1条の要件事実を一つ一つ検討する。
まず、県知事は「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員」に当たるか。県知事は、特別職地方公務員であり、「公務員」には該当する。以下、本問の行為が「公権力の行使」と言えるかを考える。
そもそも、国家賠償法1条は憲法17条を受け、違法な行政活動が行われた結果、国と公共団体(以下、「国」)は広く国民に生じた損害を賠償する責任があることを規定した条文である。とすれば、本条の「公権力の行使」とは、国の一方的判断で行う権力的作用に限らず、国が国民と対等の立場で行う非権力的作用も含め、公益的な行政作用の全てを指すと解する。
しかし、水質汚濁防止法により規制権限を適切に行使しなかったことは、行政の不作為である。国家賠償法1条は公権力の「行使」の際に国民に損害を与えた場合は、国は賠償責任を負うとするが、規制権限の不行使について国は賠償責任を負うのだろうか。
規制権限の不行使について以前は、行政庁の裁量権を理由に、国には損害賠償責任が生じる余地がないと考えられていた。
行政法Ⅱ課題レポート
設問1.
Aは、一級河川に指定されているE川に漁業権を有し、漁業を営む者であるが、最近、E川上流に立地する製紙工場群から流出するヘドロによって漁業に壊滅的な打撃を受けた。この場合、
(イ) Aは、県知事が製糸工場に対し水質汚濁防止法による規制権限を適切に行使しなかったことを理由として、県に対し国賠法一条により損害賠償を請求できるか。
(ロ) また、ヘドロの流入によって河川が物的瑕疵をもつにいたったとして、河川管理者たる国土交通大臣の属する国に対し、国賠法二条により損害賠償を求めることができるか。(原田309頁)
(イ)について
Aは、県知事が製紙工場に対し水質汚濁防止法による規制権限を適切に行使しなかったことを理由として、県に対して国家賠償法1条に基づき、損賠賠償請求をなし得るか。国家賠償法1条の要件事実を一つ一つ検討する。
まず、県知事は「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員」に当たるか。県知事は、特別職地方公務員であり、「公務員」には該当する。以下、本問の行為が「公権力の行使」と言えるかを考える。
そもそも、国家賠償法1条は憲法17条を受け、違法な行政活...