1. はじめに
「意識の流れ」という言葉を聞いたことはあるだろうか。私たちが普段生活している中でも、ひとつのものごとを考えている途中に何かしらの刺激によって考えが他のものごとに移ろう、そんな経験をしたことはあるだろう。「意識の流れ」は、そのような移ろいやすい小説中の登場人物の意識を文章に起こし、極めて滑らかな展開を作り出す手法である。James Joyceの"Ulysses"によって広く知られるこの手法はまた、Virginia Woolfの得意とするところでもあった。これを作家の個性であり技巧ではないとする向きもあるが、私は「多様な視点」(Multiple Viewpoints)と「自由間接話法」(Free Indirect Speech)によって分析可能ではないかと考えた。そこでこのレポートではWoolfにおける「多様な視点」を、代表作であるTo the LighthouseとMrs Dallowayに材をとりながら分析してみようと思う。
2. Woolf作品におけるMultiple Viewpoints
Woolf作品を読んでいると、複数の声が代わる代わる聞こえてくるような錯覚を覚える。それは、多様な(Multiple)登場人物の視点(Viewpoint)から物語が語られるためである。実例は次章において挙げるとして、まずはその概念を説明する。
2.1 視点と語り手の関係
視点を語る上で避けて通れない、やっかいな問題は、物語の語り手(Narrator)との関係である。こう書くと、物語は語り手の視点から語られているに決まっているのだから、やっかいであるはずがない、と思う人が出てくるかもしれない。しかし、今私が書いているこの文章がすでに、「語り手の視点から語られている文章」ではない。なぜなら、「物語は語り手の視点から語られているに決まっているのだから、やっかいであるはずがない」という文は、語り手である私が語り手と視点を混同している読み手を想定し、その読み手の視点から書いた文だからだ(斉藤、2000)。
つまり、物語は必ずしも語り手の視点のみから語られているわけではなく、語り手が物語の登場人物の視点を借りて、その視点から彼らの周辺情報や心境を表現することがある。わたしがやっかいと呼んだのは、この語り手と視点を同一視できない状態のことだ。
1. はじめに
「意識の流れ」という言葉を聞いたことはあるだろうか。私たちが普段生活している中でも、ひとつのものごとを考えている途中に何かしらの刺激によって考えが他のものごとに移ろう、そんな経験をしたことはあるだろう。「意識の流れ」は、そのような移ろいやすい小説中の登場人物の意識を文章に起こし、極めて滑らかな展開を作り出す手法である。James Joyceの"Ulysses"によって広く知られるこの手法はまた、Virginia Woolfの得意とするところでもあった。これを作家の個性であり技巧ではないとする向きもあるが、私は「多様な視点」(Multiple Viewpoints)と「自由間接話法」(Free Indirect Speech)によって分析可能ではないかと考えた。そこでこのレポートではWoolfにおける「多様な視点」を、代表作であるTo the LighthouseとMrs Dallowayに材をとりながら分析してみようと思う。
2. Woolf作品におけるMultiple Viewpoints
Woolf作品を読んでいると、複数の声が代わる代わる聞こえてくるような錯覚...
1.参考文献の記載がない。本文では(斉藤、2000)等記載があるが、これがどの文献を差しているのかが不明。
2.2.3においてLaeska(1970)の「全知の視点」の分類・解説と著者の意見の区別がつきにくい。
3.前章までの総括となっているが、2.3と同じ例証で終わっている。
結論ともうすこし詳細に書かれたら更に良いのではないかと思われる。