◆はじめに
最近、新聞紙面上でFTA関連の記事を頻繁に目にする。世界のFTA締結件数は1990 年以降に増加し、2000年以降その傾向はさらに加速している。2003 年末現在でWTO に報告されているだけで180 以上のFTAがあり、そのうち160 以上が1990 年以降に締結されたものである。この事実をみても現代は、企業、人、資金が世界中をこれまで以上に自由に移動できる時代であり、同時に各地域が世界的な視野に立ち、国際的に連携しながら、持続的な経済発展、国際交流・国際貢献といった課題への取り組みを推進していくことが求められている時代であると考えられる。
最近のFTA 交渉では、従来からの障害であった農業問題と並んで労働市場の開放もスポットを浴びている。これは、日本にとって「これまでの経済交渉にはなかった問題」(日本政府)である。ドイツなど他の先進国に比べて日本は労働市場の開放には慎重であったが、その日本との経済交渉の主要テーマとして人の移動自由化、すなわち、労働力移動が避けられない問題になってきたといえる。
そこで今回のレポートでは、日本とフィリピンのFTA交渉について、特に「人の移動自由化」という側面から現状分析・課題の発見といった考察を試みたいと思う。
◆現状分析と特徴について
まず日本国内の現状を見てみることにする。世論をみると、日本では景気回復の遅れ・失業率の高まりや外国人犯罪の増加といった要因により、「受け入れ」への積極的意見は依然として多くはない。しかしながら、一方で、こうした慎重論を揺るがしつつあるのが将来的な少子・高齢化の進行である。その予想を超えた進行は、日本の中長期的な労働力不足への懸念を強め、経済力の低下が現実の認識として広まりつつある。
このような現状への対策として「外国人に対して国内の労働市場を開放してもよい」との流れが産業界、官界、政界で勢いを増してきている。
テーマ:東アジアにおけるFTA交渉について
◆はじめに
最近、新聞紙面上でFTA関連の記事を頻繁に目にする。世界のFTA締結件数は1990 年以降に増加し、2000年以降その傾向はさらに加速している。2003 年末現在でWTO に報告されているだけで180 以上のFTAがあり、そのうち160 以上が1990 年以降に締結されたものである。この事実をみても現代は、企業、人、資金が世界中をこれまで以上に自由に移動できる時代であり、同時に各地域が世界的な視野に立ち、国際的に連携しながら、持続的な経済発展、国際交流・国際貢献といった課題への取り組みを推進していくことが求められている時代であると考えられる。
最近のFTA 交渉では、従来からの障害であった農業問題と並んで労働市場の開放もスポットを浴びている。これは、日本にとって「これまでの経済交渉にはなかった問題」(日本政府)である。ドイツなど他の先進国に比べて日本は労働市場の開放には慎重であったが、その日本との経済交渉の主要テーマとして人の移動自由化、すなわち、労働力移動が避けられない問題になってきたといえる。
そこで今回のレポートでは、日本と...