義務の概念は道徳的価値判断の根拠を法則におく倫理学説において重視されており、西洋で初めてこの概念を唱えたのはストア派である。中世においてはキリスト教が、これを神の命令として重視した。また、近世において、これを倫理学の中心に据えたのはカントである。また、カントの哲学を祖述したフィヒテも詳細な義務論を展開している。これらの義務論についてまとめていきたい。
まず、ストア派において義務とは、合自然的なもの、理性的なもの、あるいは根拠によって承認されたものと定義された。また、一切の人間の行為の目標は幸福にあると考えたが、その幸福は、人間の本質たる理性に従って生きることによって得られるとした。ゆえに理性の命令に従うことが、ストア派の義務である。
なお、中世はキリスト教の支配した時代であるから、義務論は信仰を中心にして展開された。神の命令に対する服従の義務であり、神に対する宗教的義務と、同胞に対する社会的義務と、自己自身に対する個人的義務とである。
次にカントの義務論であるが、カントのいう義務とは、道徳的意志の規定根拠であり、それのみが行為に道徳的価値を与えるのであり、またそれは道徳法則に対...