1 これ・それ・あれ
「これ・それ・あれ」は目の前にあるものなどを実際に指さすように使う「直示」の用法と、前後の文脈などに含まれていることを指す「文脈指示」の用法に分けることができる。そして、直示用法については、昔から距離に対応するものと考えるのが主流で、これを距離説と言うことにする。
実際の使用では距離説では説明がつかないものが少なくない。電話で遠方の友人と会話をしているとする。「こっちは寒いけど、そっちはどう?」「あっちは桜が咲いたみたいね。こっちもそろそろかな。」のように使う。こういう使い方では、話し手の領域をコ系、聞き手の領域をソ系、第三者の領域をア系で指していると考えることができ、領域説などと呼ばれる。問題は、距離説と領域説の2つを使い分けているのか、それとも距離と領域が交じり合ったような状況を考えればいいのかということだが、これはなかなか難しい問題で、どちらの説明も完全なものとはいえない。このいずれでも説明がつかないケースがある。
友人の家に言って、立派なテレビが置かれているとする。「このテレビは新しいね。いつ買ったの?ん、テレビの下のほうについている、あのスイッチは何のスイッチ?」と言う。実は、「このテレビ」「あのスイッチ」と言っているが、スイッチはテレビについているものだから、距離は変わらない。距離だけでコソアの使い分けがあるのではなく、対象の大きさにも関係があると考えたほうがいいだろう。同じ距離でも大きければ「こ」を、小さければ「あ」を使うことがあるということだ。
2 ラ抜きことば
「見たい番組があるんだけど、忙しくて見れそうもない」
「太っちゃって、大好きなワンピースが着れなくなった」
これらは従来、「見ることができる」「着ることができる」など、可能の意味で「見られる」「着られる」と言われていたが、10数年前から「見れる」「着れる」と言うことばが耳につくようになった。
日本語のあいまいな言葉の使い方や、発想の違いについて
1 これ・それ・あれ
「これ・それ・あれ」は目の前にあるものなどを実際に指さすように使う「直示」の用法と、前後の文脈などに含まれていることを指す「文脈指示」の用法に分けることができる。そして、直示用法については、昔から距離に対応するものと考えるのが主流で、これを距離説と言うことにする。
実際の使用では距離説では説明がつかないものが少なくない。電話で遠方の友人と会話をしているとする。「こっちは寒いけど、そっちはどう?」「あっちは桜が咲いたみたいね。こっちもそろそろかな。」のように使う。こういう使い方では、話し手の領域をコ系、聞き手の領域をソ系、第三者の領域をア系で指していると考えることができ、領域説などと呼ばれる。問題は、距離説と領域説の2つを使い分けているのか、それとも距離と領域が交じり合ったような状況を考えればいいのかということだが、これはなかなか難しい問題で、どちらの説明も完全なものとはいえない。このいずれでも説明がつかないケースがある。
友人の家に言って、立派なテレビが置かれているとする。「このテレビは新しいね。いつ買っ...